ブレインフォグとは?
「ブレインフォグ」とは、主に頭に靄(霧)がかかったようにぼんやりとしてしまい、考えることや集中することが難しい状態になることを言います。そのため、記憶障害や集中力が低下し、仕事や学業に支障が出ることがあります。
「ブレインフォグ」は、鬱病や様々な環境要因によって引き起こされると考えられていますが、発症する仕組みなどは未だに解明されていません。
ブレインフォグは医学用語として定義されているわけではありません。そのため、ブレインフォグが病気として診断されることはありません。
しかし、ブレインフォグは身体のどこかが正常に機能していないことの現れであり、身体から発せられる不調のサインでもあります。
ホルモンバランスの変化、薬の服用、何らかの病気など様々な原因がきっかけとなり、ブレインフォグの症状が発現*するのです。また、普段の生活環境の中にも原因が潜んでいる場合があります。具体的に例を挙げて説明していきます。
* 「発症」ではなく、「発現」という表現を用いているのは、ブレインフォグが病気とは認定されていないためです。
ブレインフォグの原因
たとえば、ブレインフォグを引き起こす原因とみなされている物には、スマートフォンやタブレット、パソコン、ゲーム機などの通信機器があります。これらは、見ているだけで常に情報がどんどん頭の中に入っていきます。自分が意識していない情報を無意識に目から取り入れ、それが脳に伝わり、脳に負荷をかけてしまうのです。
スマートフォンを長時間見ている人やパソコン作業が多い人、休憩を取らずにゲームをしている人の脳は、実はとても疲れている状態になっています。これらがブレインフォグを引き起こすと考えられています。
また、職場の人間関係や仕事、家庭内の問題などで強いストレスを抱える人も多いでしょう。ストレスや不安が続けば、睡眠不足や食欲不振の原因となり、同時にブレインフォグも引き起こしてしまいます。さらに、ストレス解消のための喫煙や過剰なアルコール摂取が、ブレインフォグに拍車をかけます。
このように、日常生活でのストレスや脳への負荷が積み重なることで、ブレインフォグは発症すると考えられています。
ブレインフォグの症状
ブレインフォグの主な症状としては、「頭に靄がかかったような状態になり、考えることや集中することが難しくなる」ことが挙げられます。そして、その症状は治療が必要なレベルから経過観察で大丈夫なレベルまで人それぞれであり、また、ブレインフォグの期間も個人差があります。
具体的には、以下のような症状が挙げられます。
- 集中しようとすればするほど、頭がぼんやりしてしまう。
- 相手の話が頭に入ってこない。
- 行動を開始するのに時間がかかる。
- マルチタスク*ができない。
- 考えごとをしていても、考えがまとまらない。
- 頭が冴えない。
- 焦点を合わせることが難しい。物事を覚えたり、思い出したりすることが難しい。
- 考える速度が遅くなる。
- 適切な表現が思い付かない、出てこない。
- 空間移動ができない。
* マルチタスク:電話をしながらメモをとるなど、一度に複数の作業をすること
これらの症状は、もちろん人によって出現も症状の程度も様々です。そして、どの症状も「本人の認識、感覚」の問題であり、周りからみたら「怠けている」「やる気がない」など、マイナスのイメージを与えてしまうことも。
また、当事者は頭が冴えない状態が恒常化すると、それが当たり前になってしまい、本来の自分を忘れてしまうなどのデメリットもあります。
また、ブレインフォグの症状は出現したり消えたりするため、明るく元気に過ごせることもあれば、ボーっとして何もできないときもあります。
このように、「元気でいつもと変わらない状態」と「何を考えているか分からない、ぼうっとした状態」が頻繁に入れ替わることで、周囲の評価にも大きな影響を与えてしまいます。
たとえば、「仕事でミスを連発」「交通事故を頻繁に起こす」「恋人との関係が悪くなる」といったことが起きる可能性もあります。このような事が起きると、「仕事に対して責任感がない!辞めてもらう!」「わたし(俺)と一緒にいたくないの?別れましょう!」というように、重大な問題に発展する場合もあります。
ブレインフォグの症状が生活に支障をきたすレベルの場合は、仕事を変える、車の運転を止めるなど生活を見直す必要があるかもしれません。
ストレスや疲労以外にも、薬の服用や病気が原因になっている場合も
ブレインフォグを発症している人の中には、抗鬱薬を飲んでいる方もいます。抗鬱薬などの薬物治療は鬱病の症状を改善させる一方で、脳にも何らかの影響を与えていると考えられます。抗鬱薬の服用や薬物の減量がきっかけとなって、ブレインフォグが発現したという報告もあります。
但し、ブレインフォグの症状と鬱病の症状は重なる部分も多いため、実際はブレインフォグの原因が抗鬱薬の服用または減量によるものなのか、それとも鬱病が原因なのか判断が難しいところです。
このように、ブレインフォグが発症する原因は様々で、また症状にも個人差もあるため、日常生活に支障が出ない限り、病院に足を運ぼうという気持ちにはならないようです。
しかし、ブレインフォグの背後には認知症や鬱病のような疾患が隠れている場合がありますので、必要に応じて、医師の診察を受けることをお勧めします。
たとえば、「物事を覚えたり、思い出したりすることが難しい」「忘れっぽい」といった認知機能の低下が主な症状の場合は、認知症を疑ってみる必要があります。
ブレインフォグと似た症状を引き起こす病気
ブレインフォグと似た症状を引き起こす病気には、次のようなものがあります。
- 慢性疲労症候群
- 睡眠障害(不眠症・過眠症)
- PMS(月経前症候群)・PMDD(月経前不快気分障害)
- ADHD(注意欠陥多動性障害)
- ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)
- 適応障害
- 不安障害
- 鬱病
- 双極性障害
- アルコール・薬物依存
- コロナウイルスの後遺症
注:これらの病気は合併していることがあります。
ブレインフォグの治療法
ブレインフォグの治療法は、状態によって異なります。主な治療法は生活習慣の改善とTMS治療(磁気刺激治療)の二つです。ここでは、TMS治療の説明は省かせていただき、生活習慣の改善に焦点を当ててお話しします。
ブレインフォグの原因は、脳疲労やストレス、睡眠不足や生活習慣の乱れなどです。そのため、食事や睡眠などの生活習慣を見直すことや、脳疲労やストレスを減らす生活を心掛けることが大切になります。
ブレインフォグになりやすい人の特徴
ブレインフォグは生活習慣を整えることで改善する可能性があります。そもそもブレインフォグになりやすい人というのは、次のような方々です。
- 残業が毎日続き、労働時間が長い。
- 仕事の責任や人間関係などのストレスが大きい。
- いつも疲れている。
- 睡眠をとっても疲れが取れない。
- 睡眠時間が6時間未満と短い。
- 趣味や息抜きができていない。
ブレインフォグの症状を緩和するために
ブレインフォグの改善には、生活習慣を見直し、心身のストレスを少しずつ減らすことが大切です。まずは、影響の大きい「睡眠」「食事」「休息」の3つの項目から取り組みましょう。
心身を休ませる
睡眠不足の人はブレインフォグになりやすいと考えられています。働いている人の場合、睡眠不足になる主な要因は残業です。夜遅くまで残業し、何もできないまま寝てしまい、また朝早くから出勤。休日も出勤している働いている…これでは心身の疲れが蓄積するばかりです。慢性的な疲労が脳に負担をかける結果となってしまいます。
一番良い方法は「残業をしない」ことですが、個人の力ではどうにもならないこともあるでしょうが、できる範囲で心身を休ませるように意識してみましょう。
- 土曜日または日曜日のいずれかは、何も考えずにゆっくり身体を休める。
- 平日は昼食後、軽い仮眠をとる。
- 夜は睡眠の質を下げないように、スマホやテレビを見続けない。
- 寝る前にストレッチ、ヨガ、深呼吸などをする。
食事に気を付ける
また、食事は睡眠と同じくらい脳に影響を与えると言われています。十分な栄養が行きわたった脳は活性化し、精神的な安定が得られ、仕事などでも最高のパフォーマンスを発揮できるようになります。ただし、食べ物なら何でも良いというわけではありません。また、栄養を摂取したり、空腹を満たすだめだけに食事をするためだけではなく、できるだけ食事を楽しむようにしましょう。さらにまた、できるだけ決まった時間に食事をすることで、生活リズムの改善にも繋がります。
食事を摂る上で大切なのは、食事の栄養バランスです。以下に、食生活の関する指針として厚生労働省、農林水産省、文部科学省が策定したものの一部をご紹介します。
- 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスをとる。
- ご飯などの穀物をしっかり摂る。
- 野菜、果物、乳製品、豆類、魚などを複数の品目を組み合わせて摂取する。
- 食塩や脂肪は控えめにする。
- 適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を心掛ける。
症状が改善しない場合は、医師の診察を受ける
生活習慣を変えることでブレインフォグの症状が回復する場合は、そのまま様子を見ても良いでしょう。しかし、ブレインフォグが長期間続くようであれば、精神疾患の可能性もあります。
つらい症状が続く場合は、しっかり専門医療機関を受診することをおすすめします。
大阪メンタルクリニック様のHPからの引用
鬱病の人が夕方になると調子が良くなる理由
次に、少し話題を広げて鬱病の話をしたいと思います。皆さんは、午前中は頭も動かず、何もする気にもなれないけれども、夕方から夜にかけて徐々に動けるようになる方はいらっしゃいませんか?実は私もその一人です。ただ、私の場合はちゃんと医師の診断を受けたわけではなく、自分で勝手に鬱病っぽいと思っているだけなのですが…
しかし、幸いなことに、体を動かす仕事をしているせいか、必死になって働いているうちに気分が晴れてくることがよくあります。多くの精神科医が推奨しているように、運動は鬱病に効果があるようです。ただ、重度の鬱病になるとベッドから出ることも難しいので、運動で症状を軽減するというのはあまり現実的な方法ではないのかなとも思ったりもします。
日内変動
鬱病の日内変動*が起こる原因は、未だ解明されていません。原因の一つと考えられているのは、体内時計の異常です。鬱病の方は睡眠障害を合併していることが多く、これが朝の目覚めを悪化させ、症状が朝に強く現れる原因といわれています。
一方、非定型鬱病や新型鬱病とも呼ばれる鬱病では、朝は調子がよいものの、夕方から症状が現れる場合もあります。
日内変動には、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量も関係していると言われています。
明確な原因は未だ解明されていませんが、日内変動は体内時計やホルモンバランスの異常などによって引き起こされていると考えられています。症状の改善には、できるかぎり規則正しい生活を心がけることが重要です。
* 体内に備わった体内時計によって、体温や血圧、精神症状などのバイタルサインが1日のなかで変動すること
おおかみ こころのクリニック様のHPからの引用
私の経験
最後に私の経験ですが、ストレスを解消しようとして、お酒を飲んだり、タバコを吸ったり、カフェインを摂取したり、甘い物を食べたりしても、かえってストレスが増すように感じます。これらはどれも過剰に摂取すると、体に害を及ぼすもので、過剰摂取によりストレス耐性が下がってしまうようです。
一生懸命、ストレスを解消しようとして、かえって悪化させていたんですね。
アルコールとストレスの関係
例えば、アルコールを例に挙げると、昔は適量の飲酒は体に良いとされていましたが、現代では少量でも体に良くないというのが、医療従事者の一致した意見です。
そもそも、適量の飲酒が体に良いとされてきたのは、古代中国の医書に「酒は百薬の長」という言葉が記されており、それが庶民の間にも広まったせいでした。諸説ありますが、この言葉は酒を国の専売制にし、税収を増やそうとした王莽が意図的に広めたと言われています。
Google AI による概要
また、飲酒は睡眠の質を悪化させ、睡眠障害を引き起こす原因となります。お酒を飲むとストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌が増えます。飲酒期間が長くなるにつれ、ストレス耐性が下がり、「抑うつ」の度合いも高まります。ストレスが溜まって、飲酒量が増えることは、「うつ病」に向かって、一気に突き進んでいることと同じです。
アルコールは、脳の興奮を抑える「GABA(ギャバ)」を分泌する神経を活性化します。つまり、鎮静剤を飲んでいるような効果がありますが、それは「問題の先送り」でしかありません。問題を先送りすると、事態は悪化して対処不能になり、ストレスは増える一方です。お酒でストレス発散はしないほうがいいのです。
樺沢 紫苑:精神科医、作家
砂糖のストレスの関係
また、砂糖は脳内の快感中枢を刺激し、「エンドルフィン」という物質を分泌させます。エンドルフィンは気持ちを落ち着かせたり、リラックスさせたりする効果があります。
一方で、砂糖には「習慣性」と「増加欲求性」があり、甘さに慣れてくると更に甘みの強い物でなくては満足できなくなります。
さらにまた、砂糖を摂取すると、血糖値が急上昇してインシュリンが大量に分泌されます。その後、血糖値が急降下して低血糖状態になり、アドレナリンが放出されます。アドレナリンは「攻撃ホルモン」とも呼ばれ、集中力低下やイライラを引き起こすと言われています。
砂糖を摂取すると、ビタミンB群を消費します。イライラやストレスなどで、もともと不足しているビタミンB群を更に消費してしまうのです。
ビタミンB群には心を落ち着かせる作用があり、また、ストレスやアレルギーの炎症を抑える副腎皮質ホルモンの合成に関与しているため、ビタミンB群が不足すると、ストレス耐性が下がってしまうのです。
Google AI による概要
人生には潤いも大切
しかし、アルコールやカフェイン、甘い物などを一切、摂取しない生活は味気ないものです。お菓子は「心の栄養」とも言われてしますし、甘党でコーヒー党の踊子には、これら我慢し過ぎたらかえってストレスが増えそうに感じます。無駄な物をすべて削ぎ落した人生は、味気ないものです。嗜好品を賢く利用しつつ、上手にストレス社会を乗り切っていきたいですね。
頑張り過ぎない
ブレインフォグには様々な要因が考えられるようですが、一つだけ共通して言えることは、ブレインフォグになりやすい人は頑張り屋さんということです。
もしも、あなたが何らかの不調を感じているのなら、心と体の声にきちんと耳を傾け、無理をせず休みましょう。ブレインフォグの改善には、頑張り過ぎない生き方がキーワードです。
急がば回れ。長い人生、時には休むことも大切です。中高年は、若者のように無理はできません。車は壊れれば乗り替えられますが、体は乗り替えられません。この先、何十年も一台の車に乗らなければならないのです。必要に応じて、メンテナンスをし、労わりながら、長く乗りたいものです。
本記事の医学的記述に関しては、複数の医療関係者の記事をまとめ、読みやすいようにリライトしました。医学に無知な筆者個人の見解は含まれておりません。