なぜ物価が上昇しているのか? 日本人が忘れがちなウクライナ侵攻の影響

お金のこと

見えない戦争

「ロシア・ウクライナ戦争」がきっかけとなって、食料や化石燃料の価格が高騰しているというニュースは皆さんもご存じかと思います。
(ロシアが「これは戦争ではなく、特別軍事作戦だ」と主張しているため、各国の首脳や国連は今のところ、「戦争」という表現を避けています。そのため、この戦争には未だに正式な名称がありません。報道などでは、暫定的に「ロシア・ウクライナ戦争」などという表現が使われていますが、私たちはこれが「戦争」ではなく、一方的な「侵略」であることを忘れてはなりません。当ブログでは、「ロシア・ウクライナ戦争」の代わりに、「ウクライナ侵攻」という表現を使わせていただきます。
ウクライナ侵攻が始まったのは、2022年2月です。当初は日本でもウクライナを応援する機運が高まっていましたが、2年近く経った今、ウクライナ侵攻は日本ではほとんど忘れられています。
今回は、私たちの視界から消えてなくなっているウクライナ侵攻と物価上昇の関係について考察します。

ウクライナ侵攻が食糧危機に直結している理由

日本では「カップ麺やうまい棒が値上がりした」などというような能天気なニュースばかりが報じられており、この問題を真剣に考えている人は少ないように思います。しかし、世界的な食糧危機はウクライナ侵攻直後から始まっていました。
ウクライナ侵攻が世界的な食糧危機に直結している理由は、大きく分けて以下の二つです。

ウクライナ侵攻が食糧危機に直結している理由1

ウクライナ侵攻が食料危機に直結している理由の一つ目は、ウクライナが主要穀物(小麦、大麦、トウモロコシなど)の一大生産国だからです。「ヨーロッパのパンかご」と呼ばれているウクライナは、小麦の輸出量が世界第五位となっています。
しかし、2022年、ウクライナ産の小麦の大半は、輸出できないまま黒海沿岸に留め置かれてしまいました。そして、その翌年は小麦の作付けさえできない状況でした。ロシア軍がいつ攻め込んでくるか分からない状況では、大地に広がって農作業をすることさえままならなかったのです。
このウクライナ侵攻が何年、続くかは誰にも分かりません。もしかしたら、プーチンでさえも分からないのかもしれません。仮に数年以内に終わったとしても、ロシア軍が化学兵器によって荒らした農地を元に戻すのには、かなりの時間がかかるでしょう。ということは、今後、数年から数十年にわたって、主要穀物の供給が世界的に減少する可能性があるのです。
さらに、一方のロシアは世界最大の小麦輸出国であり、自国の小麦を政治的な駆け引きの道具に利用しようとしています。ロシアはウクライナ侵攻を批判する「敵対国」に対して、小麦の輸出を停止または制限しています。

ロシア軍の砲撃で炎上する小麦畑

負の連鎖

中東・北アフリカなどの発展途上国の大半は、小麦消費量の半分以上をロシアとウクライナに依存しています。そのような国々には、食料価格の高騰を受けとめるだけの余力がありません。長年にわたる政治的・経済的混乱によって国の体力が落ちているところに、コロナの大流行があり、さらにウクライナ侵攻が容赦なく追い打ちをかけました。これらの国々ではウクライナ侵攻の影響が、余力のある経済大国よりも圧倒的に早く、そして確実に表れています。既にいくつかの国では、食料価格の高騰による暴動が起きています。
今年に入ってから、国連は82か国で約3億4500万人が深刻な食料不安に直面し、うち45か国の約5000万人が飢餓の一歩手前にあると発表しました。

ケニア 食料価格が2倍になり暴動が起こった
エチオピア ウクライナ産の小麦の配給を受ける人々

ウクライナ侵攻が食糧危機に直結している理由2

ウクライナ侵攻が食料危機に直結している第二の理由は、ロシアとウクライナが肥料の主要生産国だからです。多くの人は、肥料の重要さを理解していないと思いますが、肥料は穀物生産量を大きく左右する重要な要素の一つなのです。肥料を使わずに農作物を栽培すると、収穫量が60%近く減少するとも言われるほどです。
ウクライナ侵攻のせいで、現在、ウクライナでは肥料の製造がストップしています。さらにまた、世界最大の肥料生産国であるロシアも、戦争が始まった直後から肥料の輸出をストップしています。その影響で、世界的な肥料不足が既に起こっており、世界の穀物の収穫量の減少と、生産コストの上昇に伴う穀物価格の高騰が予測されています。
危機感の薄い日本でさえ、平凡な農業従事者達が「大変なことになるぞ」と警鐘を鳴らす動画をYouTubeに何本も投稿しているくらいです。平凡な農業従事者達が、現時点で既にグローバルレベルの食料危機を心配しているのは、彼らが肥料の重要さを痛いほどわかっているからに(ほか)なりません。

日本への影響は?

当初、日本は小麦や肥料の輸入をアメリカ、カナダ、オーストラリアなどに頼っており、ロシアやウクライナからの輸入量はそれほど多くないため、あまり影響がないと言われていました。
しかし、世界市場全体に出回る小麦や肥料の量が減れば、当然のことながら、アメリカ、カナダ、オーストラリア産の小麦の価格も上昇します。結果、日本でも食料価格の上昇が続いています。じわじわと値上げされているので、気付きづらいですが、この2年で食料品の価格はかなり上昇しました。考えてみれば、小麦を使っていない食品なんて、ほとんどないですからね。

ウクライナ侵攻が始まった2022年以降、小麦の価格は急激に上昇した。

ウクライナ侵攻が始まった2022年以降、小麦、パンだけではなく、食品全体の価格が急激に上昇した。

価格は変えずに、量だけ減らす「ステルス値上げ」

エネルギー価格も上昇している

ウクライナ侵攻は食料だけでなく、エネルギー価格にも影響を及ぼしています。
ロシアは石炭、石油、天然ガスなどのエネルギー資源大国ですが、ロシアはそれらの資源までをも戦争の道具として使っています。

ドイツにある天然ガスのパイプライン ロシアからの供給が止まっている

日本でも電気・ガス料金がどんどん値上がりしています。下のグラフを見てください。ウクライナ侵攻が始まってから、電気・ガス料金がいかに値上がりしているかがお分かりになると思います。

2022年以降、電力価格が急激に上昇している

ウクライナ侵攻後、電気料金はEU全体では5割、日本では3割上昇しました。現代人は電気やガスがなくては何もできません。エネルギーは生活に直結しているだけに、影響が大きいですね。
また、夏の暑さが厳しい日本では、冷房の節約は生命に直結する問題です。単なる金銭面の問題に留まりません。エネルギー価格の上昇で一番大きな影響を受けるのは、間違いなく貧困層です。

まとめ

ウクライナ侵攻をきっかけとして、世界はこれまで保ってきたバランスや秩序を大きく変える必要に迫られています。いつまでも同じ常識や手法は通用しないということです。これは個人レベルでも同じです。時代の変遷に合わせて生き方を変えていかないと、いつか取り残されてしまいます。私も含めて中高年は変化が嫌いですが、そんなことは言ってられませんね。必要であれば、ジョブチェンジ、クラスチェンジにも果敢に挑みましょう!
2024年9月、アメリカのバイデン大統領はウクライナに約80億ドル(日本円に換算すると、1兆1000億円)の追加支援をすることを発表しました。アメリカほどの大国といえども、かなり痛い出費であることは明白です。最近では、バイデン大統領も「正直、もう限界…」と本音を漏らしています(Guardian紙より)。

2024年9月26日 ホワイトハウスで会談したバイデン大統領とゼレンスキー大統領

それでも支援を続ける理由は、バイデン政権が「この戦いは安くない。しかし、ロシアの侵略を許してしまったら、それよりもはるかに高くつく」と考えているからです(UA Today紙)。

EU諸国もかなりの額の支援をしていますし、ウクライナからの難民も積極的に受け入れています。
数年間にわたるコロナの影響で世界経済が疲弊している中、頭のおかしな一人の男のために、世界中が想定外の支出と犠牲を強いられています。しかも、この戦争はこの先、何年続くか誰にもわかりません。プーチンですら、わかっていないではないでしょうか。
ウクライナはもちろん、ヨーロッパ諸国やアメリカも、「この戦争が終わったら、ロシアに責任を取らせる」と言っていますが、ロシアは国際刑事裁判所の締約国ではないので、国際裁判にかけることさえ難しいようです。
さらに、プーチンは「反省できない人」ですので、失われた命や破壊に対する代償を払うとは思えません。彼がしたことの尻拭いは、他国が行うことになるでしょう。

狂気のプーチン

今回の記事はいかがでしたでしょうか。皆さんのお役に立てれば幸いです。
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