執筆:2024年10月8日
加筆修正:2026年1月18日
見えない戦争
「ロシア・ウクライナ戦争」がきっかけとなって、食料や化石燃料の価格が高騰しているというニュースは皆さんもご存じかと思います。
(ロシアが「これは戦争ではなく、特別軍事作戦だ」と主張しているため、各国の首脳や国連は今のところ、「戦争」という表現を避けています。そのため、この戦争には未だに正式な名称がありません。報道などでは、暫定的に「ロシア・ウクライナ戦争」などという表現が使われていますが、私たちはこれが「戦争」ではなく、一方的な「侵略」であることを忘れてはなりません。当ブログでは、「ロシア・ウクライナ戦争」の代わりに、「ウクライナ侵攻」という表現を使わせていただきます。
ウクライナ侵攻が始まったのは、2022年2月です。当初は日本でもウクライナを応援する機運が高まっていましたが、2年近く経った今、ウクライナ侵攻は日本ではほとんど忘れられていますが、その影響はジワジワと私たちの生活を圧迫しています。
今回は、私たちの視界から消えてなくなっているウクライナ侵攻と物価上昇の関係について考察します。
ウクライナ侵攻が食糧危機に直結している理由
日本では「カップ麺やうまい棒が値上がりした」などというような能天気なニュースばかりが報じられており、この問題を真剣に考えている人は少ないように思います。しかし、世界的な食糧危機はウクライナ侵攻直後から始まっていました。
ウクライナ侵攻が世界的な食糧危機に直結している理由は、大きく分けて以下の三つです。
ウクライナ侵攻が食糧危機に直結している理由1
ウクライナ侵攻が食料危機に直結している理由の一つ目は、ウクライナが主要穀物(小麦、大麦、トウモロコシなど)の一大生産国だからです。「ヨーロッパのパンかご」と呼ばれているウクライナは、小麦の輸出量が世界第五位となっています。
しかし、2022年、ウクライナ産の小麦の大半は、輸出できないまま黒海沿岸に留め置かれてしまいました。そして、その翌年は小麦の作付けさえできない状況でした。ロシア軍がいつ攻め込んでくるか分からない状況では、大地に広がって農作業をすることさえままならなかったのです。
このウクライナ侵攻が何年、続くかは誰にも分かりません。もしかしたら、プーチンでさえも分からないのかもしれません。仮に数年以内に終わったとしても、ロシア軍が化学兵器によって荒らした農地を元に戻すのには、かなりの時間がかかるでしょう。ということは、今後、数年から数十年にわたって、主要穀物の供給が世界的に減少する可能性があるのです。
さらに、一方のロシアは世界最大の小麦輸出国であり、自国の小麦を政治的な駆け引きの道具に利用しようとしています。ロシアはウクライナ侵攻を批判する「敵対国」に対して、小麦の輸出を停止または制限しています。

負の連鎖
中東・北アフリカなどの発展途上国の大半は、小麦消費量の半分以上をロシアとウクライナに依存しています。そのような国々には、食料価格の高騰を受けとめるだけの余力がありません。長年にわたる政治的・経済的混乱によって国の体力が落ちているところに、コロナの大流行があり、さらにウクライナ侵攻が容赦なく追い打ちをかけました。これらの国々ではウクライナ侵攻の影響が、余力のある経済大国よりも圧倒的に早く、そして確実に表れています。既にいくつかの国では、食料価格の高騰による暴動が起きています。
今年に入ってから、国連は82か国で約3億4,500万人が深刻な食料不安に直面し、うち45ヵ国の約5,000万人が飢餓の一歩手前にあると発表しました。


ウクライナ侵攻が食糧危機に直結している理由2
ウクライナ侵攻が食料危機に直結している第二の理由は、ロシアとウクライナが肥料の主要生産国だからです。多くの人は、肥料の重要さを理解していないと思いますが、肥料は穀物生産量を大きく左右する重要な要素の一つなのです。肥料を使わずに農作物を栽培すると、収穫量が60%近く減少するとも言われるほどです。
ウクライナ侵攻のせいで、現在、ウクライナでは肥料の製造がストップしています。さらにまた、世界最大の肥料生産国であるロシアも、戦争が始まった直後から肥料の輸出をストップしています。その影響で、世界的な肥料不足が既に起こっており、世界の穀物の収穫量の減少と、生産コストの上昇に伴う穀物価格の高騰が予測されています。
危機感の薄い日本でさえ、平凡な農業従事者達が「大変なことになるぞ」と警鐘を鳴らす動画をYouTubeに何本も投稿しているくらいです。平凡な農業従事者達が、現時点で既にグローバルレベルの食料危機を心配しているのは、彼らが肥料の重要さを痛いほどわかっているからに他なりません。
日本への影響は?
当初、日本は小麦や肥料の輸入をアメリカ、カナダ、オーストラリアなどに頼っており、ロシアやウクライナからの輸入量はそれほど多くないため、あまり影響がないと言われていました。
しかし、世界市場全体に出回る小麦や肥料の量が減れば、当然のことながら、アメリカ、カナダ、オーストラリア産の小麦の価格も上昇します。結果、日本でも食料価格の上昇が続いています。じわじわと値上げされているので、気付きづらいですが、この2年で食料品の価格はかなり上昇しました。考えてみれば、小麦を使っていない食品なんて、ほとんどないですからね。
2025年現在、日本の食品インフレ率は8%を超えています。欧米各国の食品インフレ率が1~2%程度であることを鑑みると、日本の食品インフレ率は一際高い水準と言えます。

ウクライナ侵攻が始まった2022年以降、小麦、パンだけではなく、食品全体の価格が急騰しました。



価格は変えずに、量だけ減らす「ステルス値上げ」


ウクライナ侵攻が食糧危機に直結している理由2
エネルギー価格も上昇している
ウクライナ侵攻は食料だけでなく、エネルギー価格にも影響を及ぼしています。
ロシアは石炭、石油、天然ガスなどのエネルギー資源大国ですが、ロシアはそれらの資源までをも戦争の道具として使っています。

ロシアからの供給が止まっている
西側がロシアに対して経済制裁を課すと、ロシアはその報復としてヨーロッパ諸国への解石油、天然ガス、石炭の供給をストップしました。これにより、EUのエネルギー価格は暴力的なレベルで高騰しました。
EU圏内でエネルギーが不足すると、EU圏外からエネルギーを調達するようになりますので、EU圏外のエネルギー価格も高騰します。このようにして、エネルギー価格の高騰はドミノ倒しのように世界中に波及しました。
もちろん、エネルギーの80%を輸入に頼っている日本も無縁ではありません。


ウクライナ侵攻後、電気料金はEU全体では5割、日本では3割上昇しました(2024年10月現在)。
エネルギー価格は生活に直結します。電気、ガスは機械や自動車を動かす原動力となるので、エネルギー価格が上昇すると工場の稼働費や輸送にかかるコストが上昇します。生産費や輸送費の上昇はすべての製品に上乗せされますので、消費者は何を買うにも「高いな」と感じてしまいます。
一見、石油や電気とは関係のなさそうな食品の価格も、生産費や輸送費が上昇するため値上がりしてしまうのです。(食品価格の値上がりには、エネルギー価格だけでなく、原材料費、人件費の値上がりなども影響しています。)
2025年現在、日本の食品インフレ率は8%を超えています。欧米各国の食品インフレ率が1~2%程度であることを鑑みると、日本の食品インフレ率は一際高い水準と言えます。
下の表は、踊子が過去7年間に払った電気料金をまとめたものです。

表を見ていただければお分かりになると思いますが、日本でも電気料金はウクライナ戦争が始まった2022年に急激に上がっています。
今まで、何となく「高くなったな」とは感じていましたが、こうして表にしてみると改めて驚きます。
踊子は一人暮らしです。ちょっと前までは、冷房や暖房のいらない春と秋の数ヶ月間は電気料金が月3,500円程度だったように記憶しています。
それが今では、一番安い時期でも4,000円ぐらいです。月に換算すると7,000円以上になっています。
また、温暖化と寒冷化の二極化の影響で冷房も暖房もいらない季節は極端に短くなっています。

2023年に電気料金が少し下がっているのは、エネルギー価格の高騰を受けて政府が補助金を支給したからだと思います(支給期間:2023年1月~12月)。
2024年は8月~10月の三ヶ月間だけ、補助金が支給されました。
2025年は1月~3月、および7月~9月の六ヶ月間、補助金が支給されました。
これらの補助金は国民に直接、支給されるのではなく、電気・ガス会社に支払われていますので、気が付かない人も多いかもしれません。
まとめ
ウクライナ侵攻をきっかけとして、世界はこれまで保ってきたバランスや秩序を大きく変える必要に迫られています。いつまでも同じ常識や手法は通用しないということです。これは個人レベルでも同じです。時代の変遷に合わせて生き方を変えていかないと、いつか取り残されてしまいます。私も含めて中高年は変化が嫌いですが、そんなことは言ってられませんね。必要であれば、ジョブチェンジ、クラスチェンジにも果敢に挑みましょう!
2024年9月、アメリカのバイデン大統領はウクライナに約80億ドル(日本円に換算すると、1兆1000億円)の追加支援をすることを発表しました。アメリカほどの大国といえども、かなり痛い出費であることは明白です。最近では、バイデン大統領も「正直、もう限界…」と本音を漏らしています(Guardian紙より)。

それでも支援を続ける理由は、バイデン政権が「この戦いは安くない。しかし、ロシアの侵略を許してしまったら、それよりもはるかに高くつく」と考えているからです(UA Today紙)。
EU諸国もウクライナにかなりの額の支援をしていますし、ウクライナからの難民も積極的に受け入れています。
コロナの影響で世界が疲弊している中、頭のおかしな男が引き起こした戦争のせいで、世界中が更なる犠牲を強いられています。しかも、この戦争の終わりは誰にも見えません。プーチンにですら、見えていないのではないでしょうか。
「この戦争が終わったら、ロシア(プーチン)に責任を取らせる」とウクライナは言っています。もちろん、ヨーロッパ諸国やアメリカも同じです。しかし、ロシアは国際刑事裁判所の締約国ではないので、国際裁判にかけることは難しいようです。
さらに、プーチンは「反省できない人」ですので、彼が引き起こした破壊行為の代償を払うとは思えません。彼が犯した罪の尻拭いは、他国が行うことになるでしょう。

今回の記事はいかがでしたでしょうか。皆さんのお役に立てれば幸いです。
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