ゴールドラッシュで儲かったのは金を採掘した人でなく、つるはしを売った人だった

お金のこと

今、ハイパースケーラーと呼ばれる巨大企業が、世界を巻き込んで大がかりな戦争を仕掛けています。
「ハイパースケーラー」は「超」を意味する「ハイパー」と「規模」を表す「スケール」を掛け合わせた造語です。その名の通り、世界中に数多くの巨大施設を持ち、膨大な記憶・処理サービスを提供する企業です。
ハイパースケーラーの代表は、皆さんもよくご存知のアマゾン、マイクロソフト、Googleなどです。
AIの世界は血を血で洗う「勝者総取り」の過酷な世界です。この戦いは、競争相手がすべて倒れ、最後の一人になるまで終わりません。

AI特需

AI特需はAI企業だけでなく、周辺産業も潤しています。特に、半導体業界はここ数年で大きな伸びを示しています。
NVIDIA、TSMC、SKハイニックス、キオクシア、東京エレクトロンなどの半導体関連企業は、AI企業の上流に位置しており、AI開発競争のカギを握っていると言っても過言ではありません。

しかし、半導体企業よりもさらに上流に位置している企業があります。それが電力会社です。巨額の資金を投じて建設したデータセンターも、電力がなければ動きません。「エネルギーを制する者はAIを制す」のです。

AIの開発競争の激化に伴い、今、世界中で電力の争奪戦が起こっています。
AI企業はデータセンターのために少ない電力を奪い合い、他社よりも多くの電力を確保するために高い料金設定で契約を交わしています。

2050年の電力量は、現在の2倍になると予測されている
出典:一般財団法人 日本エネルギー経済研究所

ゴールドラッシュの時、儲けたのはツルハシを売った人だった

200年前のゴールドラッシュ時も、今と同じような現象が起こっていました。
未知の巨大市場に対する期待、熱狂した群集、現実と予想の乖離など、AIバブルとゴールドラッシュには、類似点がたくさんあります。

ゴールドラッシュの時に一番儲けたのは、皮肉にも金の採掘者ではなく、採掘者につるはしやジーンズを売った人々でした。
金の採掘者たちは過酷な労働環境の中、健康を害し、無一文で帰郷する人が多かったようです。
しかし、彼らにツルハシを売っていた業者は、辛い肉体労働をすることもなく、楽して儲けていました。採掘者はツルハシがなければ仕事にならないので、多少高くても文句を言わず買ってくれたからです。

また、彼らのためにジーンズを考案したリーバイスは、ゴールドラッシュが終わった後も生き残り、世界的な大企業へと成長しました。

当時、ジーンズのような丈夫な作業着はまだ発明されておらず、採掘者たちはすぐに破れてしまう服に困っていました。
そんな彼らの悩み事を解決したのが、リーバイ・ストラウスです。彼は当時、誰も考え付かなかった事を行動に移しました。馬車の幌に使われている丈夫なキャンバス地から作業着を作ったのです。この画期的な作業着は大ヒットし、世界中で飛ぶように売れました。

この話からも分かるように、どんな時でも一番得をし、ブームが終わった後も生き残れるのは、流れの上流に位置した者です。

採掘者は重労働と栄養不足、生活環境の悪さに
体を壊す者も少なくなかった
ゴールドラッシュ以前は
ジーンズのような丈夫な作業着は存在しなかった

ITバブル

2000年のITバブルの時も、AIブームと似たような現象が起こりました。
空前のITブームに乗って、IT関連企業が雨後の竹の子のように現れ、ドットコムと名が付くだけで、企業の株は何倍にも跳ね上がりました。
光ファイバーはどれだけ高値でも飛ぶように売れ、生産が追いつきませんでした。今の半導体と同じです。
しかし、最終的には過剰投資が原因で、ITバブルは弾けてしまいました。

その後、何が起こったかというと、IT企業が次々と倒産したことで、光ファイバーの需要も減り、ブームに乗って積極的に設備投資をした企業は大きな負債を抱えることになりました。
需要の減少とその後の技術の進歩により、光ファイバーの価格はピーク時の1/10以下にまで下落しました。
(光ファイバーと同じことが、半導体にも起こるかもしれません。現在、AI向け半導体(GPU)の価格は、1枚あたり500万円~600万で取り引きれています。AIブームが本格化する前の価格と比較すると、3~5倍になっています。)

この時、打ち捨てられたITインフラを二束三文で利用して急成長したのが、今のGoogle, Amazon, Meta (Facebook)などのプラットフォーマーです。彼らは、他社が巨額の資金を投じて敷設したITインフラを利用して安価なプラットフォームを築くことで、業績を大きく伸ばしました。

皮肉なことに、今、彼らは巨額の資金を投じてインフラを敷設する側になっています。ミイラ取りがミイラになってしまったのです。
次世代の勝者は、Google, Amazon, Metaが築いたAIインフラを安く利用して、新しいサービスを提供する企業かもしれません。

2026年は「攻め」ではなく、「守り」の投資

インフレ、物価上昇、円安、金利上昇など、2026年はネガティブな材料が出揃った年になりました。AIバブルもいつ弾けるか分かりません。ウクライナ戦争やホルムズ海峡の閉鎖などの影響で、石油価格も高騰しています。
こんな時は、「攻め」ではなく、手堅く守備を固めるのもよいかもしれません。

ディフェンシブ株とは

守りの株式投資と言えば、真っ先に思いつくのがディフェンシブ株です。
ディフェンシブ株とは、代替品がなく、生活に欠かせない物を生産している企業の株です。
このような製品は景気が悪化しても需要は減りませんし、企業が高い価格決定力(企業がどんどん価格を釣り上げられる)を持っているので不況に負けません。

具体的には、食品、医療品、生活消耗品(せっけん、トイレットペーパー、洗剤など)、日用品、エネルギー(電気、ガス)、インフラ(通信、鉄道)、金融(銀行)などが挙げられます。

景気敏感株とは

一方、ディフェンシブ株とは対極にあるのは、景気敏感株です。具体的には、自動車、機械、半導体、鉄鋼、化学、建設、不動産、観光、サービス業など景気の影響を大きく受ける銘柄です。
これらの品目は、景気が悪化すると、途端に売り上げが落ちてしまいます。不況の時は誰もAIサービスに課金しませんし、車や家、スマートフォンも購入しませんから納得ですね。

ディフェンシブ株の種類

ディフェンシブ株は、大きく分けて以下のセクターに分類されます。

・エネルギーセクター(電力、石油、ガス、燃料、エネルギー設備など)
・公共事業セクター(鉄道、道路、公益事業、電力、ガスなど)
・ヘルスケアセクター(医薬品、ヘルスケア用品、バイオテクノロジー、ライフサイエンスなど)
・生活必需品セクター(食品、飲料、家庭用品、日用品など)
・金融(銀行、保険、証券など)

NISAで購入できるディフェンシブ株(インデックス)

お勧めは、「S&P 500 セクター別インデックス」です。
「S&P 500 セクター別インデックス」はその名のとおり、S&P 500に含まれる銘柄を、エネルギーセクター、ヘルスケアセクター、生活必需品セクター、公共事業セクターなど、銘柄をセクター毎に分けたインデックスです。全部で11種類あります。
全米トップクラスの企業で構成されていますし、インデックス株なので、安心感があります。

ただし、一つだけ注意点があります。上記の銘柄はeMAXIS Slimシリーズと比較すると、手数料がやや高めです。

* 投資は自己責任でお願いします。

ご参考までに、踊子は「XLU(公共事業セクター)」という銘柄を少し買っています。このインデックスは、構成銘柄の60%以上が電力関連株です。
電力・ガス・水道など生活に不可欠な公益サービスが中心なので、需要は底堅く安定しているはずなのですが、思ったよりも変動が激しく、最近、やっとプラスに転じました。
しかし、長期的には確実に上昇していく銘柄なので、短期の変動に囚われない方にはお勧めです。

* 投資は自己責任でお願いします。

似たような銘柄で「XLE」というものもあります。こちらは石油や天然ガスなどが中心の銘柄ですので、エネルギー価格の変動の影響を大きく受けます。例えば、ホルムズ海峡に何かあると、それが株価に如実に表れます。
今年に入ってからは一気に上昇しましたが、石油関連の株はボラティリティ(価格変動)が大きいので、その点だけ注意が必要です。

3月2日:イランがホルムズ海峡の通航を禁止する
6月18日:海上封鎖が一時解除される
7月下旬:アメリカの攻撃が劇化。通行がほぼ停止

日本のディフェンシブ株

日本のディフェンシブ株も探してみたのですが、NISAで買えるインデックス株は見つかりませんでした(間違っていたら、ごめんなさい)。
個別銘柄でしたらNISAで買えるものがありますが、投資初心者は個別銘柄には手を出さないほうが無難でしょう。

もしも、日本のエネルギーセクターにまるっと投資をしたいのであれば、間接的ではありますがTOPIXがお勧めです。TOPIXには電力会社大手10社が含まれています。

TOPIXに含まれる電力大手10社

・北海道電力
・東北電力
・東京電力ホールディングス
・中部電力
・北陸電力
・関西電力
・中国電力
・四国電力
・九州電力
・沖縄電力

TOPIXに含まれる石油・鉱業大手10社

・ENEOSホールディングス
・INPEX
・出光興産
・コスモホールディングス
・石油資源開発
・日鉄鉱業
・K&OエナジーG
・ニチレキ
・ユシロ化学工業
・日本コークス工業

日経平均株価に含まれる電力大手3社

ちなみに、日経平均株価に含まれる電力会社と石油会社は以下のとおりです。TOPIXに比べるとかなり少なくなっています。
TOPIXは日本市場全体を網羅していますが、日経225は日本のトップ225社だけで構成されているので、当然と言えば当然ですね。

・東京電力ホールディングス
・中部電力
・関西電力

日経平均株価に含まれる石油・鉱業大手3社

・INPEX
・出光興産
・ENEOSホールディングス

ディフェンシブ株の注意点

ディフェンシブ株は景気が悪くても大きく下落しないので、安心・安全ですが、大きく儲かる銘柄ではありません。あくまでも、守りの投資です。インフレ対策または分散投資の一環として考えておきましょう。

投資のコアはS&P500やオルカンなど利回りの良いものにし、ディフェンシブ株はサテライトにしましょう。
ディフェンシブ株に全振りしてしまうと、景気が回復した時に成長の果実を逃してしまいます。

2026年、期待が集まる分野

今回、ご紹介したのは投資初心者向けの「守り」の投資です。投資上級者には刺激が足りなくてつまらないかもしれません。
攻めの投資がしたい方はリターンの大きい成長株(グロース株)やテーマ株、新興国株、防衛産業・航空宇宙産業に関連した株を選ぶのも手かと思います。

AI特需の裏側で意外な企業が躍進中

AI特需の裏側で、電力会社だけでなく、発電所に使用するタービンを製造する企業なども注目を集めています。
三菱重工は発電所に使用するタービンを製造しており、この分野では、世界でもトップクラスのシェアを誇っています。
三菱重工業が製造するタービンの発電効率は驚異の64%と、世界最高水準を誇っています。
電気、燃料、熱などのエネルギーは出来るだけ効率良く利用したいものですが、変換・送電・消費する過程でどうしてもロスが出てしまいます。
現代の技術で、このエネルギーロスを36%にまで削減できる企業は、日本の三菱重工とアメリカのGEベルノバ、ドイツのシーメンス・エナジーぐらいしかありません。

また、三菱重工は防衛産業や航空宇宙産業の分野でも実績がありますので、数年前から株価が物凄い勢いで上昇しています。

三菱重工はJAXAとの共同開発も進めている

三菱重工と同じく、IHIや川崎重工も発電用タービンやモーターの製造、防衛産業、航空宇宙産業に大きく貢献している企業です。

IHIと米GEベルノバが共同開発した大型タービン

まとめ

「歴史は繰り返さないが韻を踏む」投資の世界でもよく引用される言葉です。
この言葉を遺したのは、アメリカの作家マーク・トウェインだと言われています。
歴史を振り返れば分かるように、完全に同じ事象は起こりませんが、韻を踏むように似たような事象は繰り返されます。

1840年代の鉄道バブルの時も、人々は世界を変える革新的な技術の登場に熱狂しました。しかし、その後、実需に釣り合わない過剰な投資が原因でバブルが崩壊し、多くの株主が損失を抱えました。
素晴らしい技術と株価は必ずしもイコールではありません。

投資の世界では、数年ごとに大きなバブルが訪れます。
機会損失を恐れる群集はすべてのブームに乗ろうとしますが、長い人生ですべての投資ブームに乗っていたら破産してしまいます。
クセ球は見逃して、絶好球が来たときだけバットを振れば良いのです。なぜなら、投資の世界に見逃し三振はないからです。

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