今回は、旧約聖書に出てくる「7頭の美しい雌牛と7頭の醜い雌牛」の話を下敷きにした、「資産防衛」や「人生」に関するお話です。
聖書の中のお話ですが、宗教的な内容ではなく、人生にも通じる深い教訓が含まれているお話です。
しかし、まずはこの記事を書くきっかけとなった石油備蓄のお話から始めさせてください。
日本の石油備蓄は神レベル?!
ホルムズ海峡の封鎖が長引いており、世界中が石油不足に苦しんでいます。もちろん、日本も例外ではありません。
皆さんもご存知のように、日本は資源の乏しい国であり、石油の99.7%を輸入に頼っています。
しかし、日本人は今のところ普通の生活が送れていますね。それは、私たちの知らないところで、政府が大量の石油を備蓄していたからです。
ホルムズ海峡が封鎖されるまで、日本に石油の備蓄があったことを知らない人のほうが多かったのではないでしょうか?
この備蓄、結構、すごいことですし、実行するのはかなり大変な事のようです。
実は、日本の石油備蓄量は世界的に見てもトップクラスです。国際エネルギー機関(IEA)からも、「有事の際のリスク耐性が非常に高い」と評価されています。
以下がIEAの基準と、加盟国の基準、そして日本の備蓄量です。
IEAが定めた貯蓄量の基準:90日分
IEA加盟国の平均備蓄量:約140日前後
日本の備蓄量:197日分(2026年9月時点、約7,000万キロリットル・6,000万トン)
しかし、中東情勢の先が読めない状況では、どれだけ備蓄があっても安心はできません。
日本は中東以外の地域から石油を調達することで、なんとかやりくりしていますが、こうしている今も日本の石油備蓄は刻々と減っていっています。
私たちが知らない間に、日本中にたくさんの貯蔵タンクが建てられていた!
1970年代のオイルショック以降、日本政府は大規模な石油貯蔵タンクの建設を進めてきました。
現在は、官民合わせて全国20ヵ所に大規模な石油貯蔵タンクが設置されています。

出典:資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」




出典:エネこれ
オイルショックとトイレットペーパーの関係
ちょっと、脱線しますが、1970年代の第一次オイルショックの時、トイレットペーパーの買い占め騒動が起こったって知ってしますか?
皆さんの中にも、白黒のニュース映像を見たことのある方がいらっしゃるのではないでしょうか?
トイレットペーパーの主原料は木材パルプです。なのに、なぜトイレットペーパーの買い占め騒ぎが起こったのでしょうか?
原因は、メディアの誤報と、パニック買い、それに群集心理でした。
現代の人間からみると、とてもバカらしい騒動ですが、この時代の人達を笑うことはできません。
同じような事が起こったら、SNSが発達した現代のほうが危険かもしれません。

備えあれば憂いなし
「備えあれば憂いなし」この言葉は石油の備蓄だけでなく、すべてに当てはまります。
しかし、「言うは易し 行うは難し」です。何もない平和な時に、有事に備えるのは意外と難しいものです。
例えば、大地震に備えて備蓄をしている人はどれくらいいるでしょうか?水や缶詰をちょっと余分に備蓄するだけでも中々、難しいですよね。
ましてや、何が原因で、いつ起こるか分からないオイルショックに備えて、約7,000万キロリットル(約6,000万トン)の石油を備蓄するのは非常に大変な事です。
そもそも、石油の備蓄には莫大な費用がかかります。
貯蔵タンクの建設や維持にもお金がかかりますし、安全面での配慮も必要です。また、適切な管理をしないと、石油が使えなくなってしまう可能性もあります。
これを可能にしたのは、(知らぬ間に使われていた)私たちの税金と石油備蓄に協力してきた民間の石油会社です。
これだけの事を成し遂げた当時の通産省の大臣と官僚たちの苦労は、並大抵のものではなかったでしょう。
このような大規模な公共事業、それもかなり先を見越した施策には、賢いリーダーの存在が不可欠です。
実はこれとよく似た事が、古代エジプトでも行われていました。その話が旧約聖書に載っています。

エジプトの大飢饉
時は紀元前2686年。エジプト第3王朝時代、エジプトのファラオは2晩続けて、気味の悪い夢を見ました。
最初の晩の夢
肥えた美しい7頭の雌牛が、ナイル川から上がってきて草を食べていた。しかし、その後に、非常に醜い、痩せ細った7頭の雌牛がナイル川から上がってきて、肥えた7頭の雌牛を喰い尽くしてしまった。
二晩目の夢
1本の茎に7つの良い穂が実った。しかし、その後、東風に焼けた7つの細い穂が出てきて、7つの良い穂をすべて飲み込んでしまった。
ファラオはヨセフにこの夢の意味を解き明かすように命じました。
信仰が篤かったヨセフは、神様から特別な知恵を授かっていたため、この二つの夢を難なく解き明かしました。

「王様に申し上げます。2つの夢の意味は同じです。肥えた牛と良い穂は『7年間の大豊作』を意味します。痩せた牛と細い穂は、大豊作の後に訪れる『7年間の大飢饉』を意味します。
豊作の後に訪れる飢饉があまりにも激しいため、エジプトの中で7年間の大豊作を覚えている者は一人もいなくなるでしょう。
神がこの事をファラオに2度も示されたのは、この事が神によって定められており、必ず実行されるからです。」
王はヨセフの知恵に感銘を受け、エジプト全土を管理する宰相に任命し、飢饉に備えるよう命じました。
宰相となったヨセフは、7年の豊作の間、人々に収穫された穀物の5分の1を税として納めさせ、それを穀物蔵に貯蔵しました。
7年間の豊作は類を見ないほどの大豊作で、蔵に入れた穀物は海の砂のように多く、量りきれなくなったので、遂には量るのを止めてしまいました。

7年間の大豊作の後、ヨセフの預言どおり、7年間の大飢饉が始まりました。
人々の食料が尽きると、ヨセフは国中の穀物蔵を開き、蓄えていた穀物を人々に売りました。
その後、飢饉がますます激しくなったので、周辺諸国の人々も穀物を求めてエジプトに来るようになりました。
この飢饉は実際にあったようで、エジプトの石碑にもその記録が残っています。

エジプト第3王朝の時代に、7年にわたる干ばつと飢饉が起こったと記されている。
エジプトの大飢饉から私たちが学ぶこと
ポイント1 ― 予兆は繰り返し現れる
ファラオが二度も同じ内容の夢を見たように、何かが起こる前には予兆が何度も起こります。それは取るに足らない小さな予兆かもしれませんし、ファラオの夢のように胸をざわつかせるレベルの予兆かもしれません。
しかし、残念ながら、多くの人は予兆を見過ごしてしまいます。後になってから、「あれが予兆だったかも」と気付いても、もう遅いのです。
皆さんもこれまでの人生で、何度か同じような経験をしたことはありませんか?
私事ですが、踊子も予兆を無視したことで、事故に遭ったことがあります。
今考えれば、出掛けようとする度に何度も邪魔が入っていましたし、何となく嫌な予感もしていました。
皆さんも小さな違和感を無視しないでくださいね。
ポイント2 ― 有事に備える
ヨセフは7年間の豊作が始まると、税率を上げました。収穫量の5分の1を税として納めさせたのです。(税率20%は、当時としては非常に良心的な税率です。)
しかし、恐らくは国民の反発もあったのではないでしょうか。しかし、7年先を見てたヨセフは、増税を断行しました。
好調な時、人はこの先もずっと良い状態が続くと考えがちです。しかし、人生にも、景気にも波はあります。
豊作の時にその実りをすべて食べ尽くしていては、飢饉が来た時、何も残っていません。
ポイント3 ― 国に頼りすぎない
エジプトのヨセフの話は、一見すると、素晴らしい指導者が素晴らしい政治を行っただけの話のように感じられます。
しかし、今回、私が着目したのは、素晴らしい指導者としてもヨセフの資質ではなく、全員が同じような行動をする一般庶民のほうです。
ヨセフは蓄えた穀物を、無料で国民に配っていたわけではありません。穀物の代金はしっかり徴収していました。
飢饉が始まった当初は、皆、銀を使って穀物を買っていました。しかし、飢饉が長引くと、人々は銀を使い果たしてしまいました。
ヨセフが国中に蔵を建て、穀物を貯蔵している事は皆が知っていた筈です。恐らく、その理由も知らされていた筈です。
しかし、多くの人は7年の間、国に任せっきりで、自分では何も蓄えていなかったのです。
国の福祉制度を当てにし、個人レベルで備えていなかった人には厳しい現実が待ち受けていました。
ポイント4 ― 苦境は予想以上に長引く
手持ちの銀を使い果たした人々は、銀の代わりに馬、羊、牛、ろばなどの家畜を売って、食料に替えました。
その家畜も尽きると、今度は農地を売りました。ヨセフは人々の農地を買い上げ、ファラオのものとしました。
これほどまでに飢饉が長引くと思っていなかった人々には、すべてを売り尽くしてしまいました。
後には自分自身の体しか残っていませんでしたので、人々は自分自身をファラオに売り渡し、ファラオの奴隷となりました。
ポイント4 ― 富める者はますます富み、貧しき者は持っている物でさえ取り去られる
飢饉に備えていなかった人々は、ヨセフのお蔭で命は助かりましたが、奴隷の身分となってしまいました。ファラオの農奴として、富める者をより富ませるために、一生、働いたのです。
付け加えておきますと、この飢饉によって、エジプトのすべての土地と富がファラオのものとなりました。
また、ヨセフの一族たちも王の庇護の下、大いに栄えました。
まとめ
エジプトの大飢饉のお話を読んで、皆さんはどう思いましたか?
ここ数年、豊作状態が続いている株式市場に似ているとは思いませんか?
S&P500やオルカン、日経平均やTOPIXも絶好調で、インデックス投資をしている人で損をした人はいないんじゃないかとまで言われいますね。
一方で、豊作の後に大暴落が来るとも予想されています。いつ来るか分からない大暴落のために、何か備えはできるでしょうか?
恐らく、一番、良い手は生活防衛資金を多めに確保しておくことかもしれません。
人間はお尻を叩かれないと行動しない生き物です。危機が目の前に来てから焦っても間に合いません。
私たちもヨセフのように、将来に備えて、粛々と備蓄ができると良いですね。
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