バフェットが日本の商社株を買った5つの理由

お金のこと

投資の神様ウォーレン・バフェット氏は、2019年から日本の5大商社の株を買い占めています。バフェット氏のお蔭で、日本人の商社に対する評価も大きく変わり、日本の5大商社の株価は上昇し続けていますが、それでも大型テック株に比べると認知度はまだまだ低いようです。
今回は、日本人でもよく分かっていない日本の「商社」について、詳しく解説します。

バフェット氏が日本の商社を推している理由

ばかばかしいほどの安値

バフェット氏が日本の商社株に注目することとなったきっかけは、2019年に遡ります。
日本企業のハンドブック(英語版「四季報」)のページをめくっていたバフェット氏は、「ばかばかしいほど安い価格で売られていた」5大商社の株を発見しました。

その当時、日本の商社株は「PBR1倍割れ*」の状態で放置されており、本来の価値を考えるとばかばかしいほどの安値で売られていたのです。バフェット氏が大好きな「バリュー投資」の対象としては、申し分がありませんでした。
ちなみに、キオクシアが最高値(11万円)を付けたときのPBRは、50倍超でした。

その後、日本の商社株のPBRは、バフェット氏のお蔭で1.5倍〜2.2倍へと上昇し、株価も5倍~7倍になりました。

* PBR:株価純資産倍率。「PER」と混同しないように。
 PBR1倍以下:株価が純資産を下回っている状態。優良企業であれば、かなりの割安。
 PBR1倍:適正水準。
 PBR1倍以上:割高。将来の収益が期待され、高く買われている状態。

出典:テレ東BIZ
バフェット氏が購入を始めた7年前との比較
バフェット効果で商社株は5~7倍になった

ビジネスモデルの類似

バフェット氏が日本の総合商社のビジネスモデルを、日本人以上に理解し、適正な評価を点けられたのはバークシャーという巨大複合企業(コングロマリット)と日本の商社が良く似ていたからです。
「自分の能力の輪から出ない」、「理解できるビジネスにしか投資しない」というバフェット氏の投資哲学ともぴったり一致していました。日本の商社はまさに彼の能力の輪(Circle of Competence)の範囲内だったのです。

バフェット氏が得意とするのは、鉄道、公益、エネルギー、保険、金融、消費財、製造業などです。
日本の商社もエネルギー(石油や天然ガスの輸入)、公益事業(電力・ガス・水道事業への参画)、製造業(原料の供給)などの事業に参画しています。
バークシャーと類似点は多いですね。

バフェット氏が株を保有しているシーズキャンディー社のチョコ
英語の「candy(キャンディー)」は、
キャンディーだけでなく、チョコレートなどの甘い菓子全般を指す

余談ですが、バフェット氏はITバブルの時も、「自分の能力の輪から出ない」という投資哲学を曲げませんでした。
「ITのことはよく分からないから」とIT企業に投資しなかったバフェット氏を、人々は「時代遅れの年寄り」と嘲りました。
しかし、ITバブルの崩壊後、市場から退場したのはバフェット氏ではなく、バフェット氏を嘲笑った人達でした。

日本の低金利を利用して、商社株をさらに安く購入

バフェット氏は日本の商社株を購入する際、高度な金融戦略も駆使しました。
金利が低い日本で円建ての社債を発行し、巨額の円資金を確保し、商社株の購入に充てたのです。

簡単に説明すると、「社債」は「借金」です。借金をするなら、金利の高いアメリカで借金をするよりも、金利の低い日本で借金をしたほうが利息が低くなり、有利です。ましてや、バークシャーほどの規模の社債になると、その差は数十億円単位になります。

社債については、別の記事で詳しく説明していますので、興味のある方はそちらもお読みください。

★ お勧めの商社株

上述した5大商社の株は2,000円~5,000円前後ですが、もっと安い商社株もあります。
それが、東証の商社株インデックスです。
東証の商社株インデックス「Next Funds商社・卸売上場信託」は、TOPIXに含まれている銘柄の中から、商社・卸売業だけを集めたインデックスです。
個別銘柄を避けたい投資初心者に、お勧めです。

* 投資は自己責任でお願いします。

2026年8月10現在
NF商社卸売 5年チャート
2021年7月は株価が76円だった。5年で3倍になった計算。

「NF商社卸売業」に含まれている上位銘柄は以下のとおりです。TOP5だけで、全体の約7割以上のウェートを占めています。

知って得する投資の小ネタ

TOPIXは17セクターに分類されている

話は少し逸れますが、皆さんはTOPIXの構成銘柄が17の分野(セクター)に分類されていることをご存知ですか?
TOPIXの17の分野ごとに17のインデックスが作られており、これらはすべてNISAの成長投資枠で購入が可能です。
上述した「NF商社・卸売上場信託」も、この17種類のインデックスの一つです。

TOPIXの17のセクター
出典:野村アセットマネジメント
TOPIXの17のインデックス
出典:野村アセットマネジメント

ちなみに、過去にご紹介した「NF銀行業」も、TOPIX 17セクターの一つ「銀行業」です。

2026年8月10現在

S&P500も11セクターに分類されている!

ちなみに、S&P500の構成銘柄も11種類のセクターに分けられ、それそれにインデックスが作られています。
これらも
すべてNISAの成長投資枠で購入できます。

詳しい説明については、過去の記事をご参照ください。

独自の進化を遂げた日本の商社

海外の商社は石油や金属など、特定の分野に特化した企業が多いのですが、日本の商社は独自の進化を遂げました。それが「総合商社」です。

日本で最古の商社は、1858年(安政5年)に創業された伊藤忠商事です。初代・伊藤忠兵衛が、麻布の行商を始めたのが商社のビジネスモデルの原型とされています。
その後、明治の近代化に伴い、財閥系(三井物産・三菱商事)の商社が台頭し、高度経済成長期を経て、多角化した「総合商社」へ進化しました。

現代の商社は「売買の仲介」という単純なビジネスモデルから、国内外の企業や資源権益に資本を投じ、経営に参画して利益を得る「事業参画型」のビジネスモデルへとシフトしています。
巨大な資本を背景に、グローバルな資源・エネルギーの確保から、インフラ事業への参画、生活消費材の製造に至るまで、総合商社にしかできない多角的な事業を展開しています。

総合商社が取り扱う品目は、資源・エネルギー、インフラ、自動車、穀物、食品、生活消費材など多岐に渡ります。
その中でも、消費者の生活に大きな影響を及ぼすのは、資源・エネルギー、穀物などです。私たちがガソリンやガス、電気などを普通に使えるのも、食料の約6割を輸入に依存している日本人が飢えずに済むのも、商社の働きがあればこそなのです。

余談になりますが、今年の2月28日にホルムズ海峡が封鎖された時、踊子はまだ病院にいました。病院なんて外の世界とは隔絶されていて、中東情勢のニュースなんて関係ないと思われるかもしれませんが、意外にも一般の人よりも早くホルムズ海峡が封鎖の影響を感じました。

ナフサの不足が医療用手袋の不足に直結していたです。2月末にホルムズ海峡が閉鎖され、3月初旬には既に看護士さんたちが「医療用ビニール手袋が足りない」とこぼすようになっていました。
医療の現場では、手術だけでなく、あらゆる場面で医療用手袋を大量に消費します。感染を防ぐため、医療用手袋を患者ごと、行為ごとにばんばん使い捨てるのです。食事を運ぶ時でさえ、手袋が必須です。
私が入院している時は手袋がなんとか足りていたようですが、今はどうなのでしょうか?価格はかなり高騰しているようです。

日本の5大商社

日本の5大商社は三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事です。有名な企業ばかりですので、皆さんもご存知かと思います。

バークシャーは2019年に日本の5大商社の株式を取得し始め、2025年の保有比率は約10%に達しています。特定の商社に偏ることなく、5大商社の株を10%ずつ保有しているのは、すべての分野を満遍なくカバーするためと言われています。
投資金額は2025年末までに、総額で約354億ドル(約5兆5,000億円)に達しています。
バフェット氏が日本の商社に、いかに期待しているかが分かりますね。

バークシャーが保有する株の中でも、
日本の商社株は上位に位置する
出典:Diamond Online(2026年3月)

5大商社の特徴

上述した5大商社は、それぞれ得意とする分野が異なります。
バークシャーが5大商社の株をすべて保有しているのも、このためです。

商社の存在意義 

広義では、商社は卸売業に分類されます。つまり、物を仕入れて、卸す仕事です。
日本の商社株が長年、「ばかばかしいほど安い価格」で放置されていたのも、多くの日本人にとって商社は「卸売業」程度の認識しかなかったからです。

しかし、バフェット氏の商社に対する見方は違いました。彼は日本の商社に単なる卸売業以上の価値を見い出していたのです。
バフェット氏に見えていて、私たちに見えていなかったものとは何でしょうか?

直接取引よりも、商社が間に入ったほうが有利になる仕組み

通常、商品が消費者の手に届くまでには、いくつもの企業が介在しています。
しかし、今、世の中の流れは変わってきています。できるだけ利益率を上げるために、直販に切り替える企業が増えています。

例えば、サムスン電機はビッグテック向けの製品を直販に切り替えています。
また、GoogleやAmazon、Microsoftは、NVIDIAへの依存度を低くするために、自社で半導体の開発を進めるなど、直販化・垂直統合の動きが加速しています。

一方で、直接取引が必ずしも良い結果を出すとは限りません。仲介業者(商社)が間に入ってくれたほうが、合理的な場合もあるのです。
特に、発展途上国との取引では、商社の存在が必要不可欠となるケースが多いようです。
例えば、法の整備が遅れている国や、商習慣が日本や西洋諸国とは極端に異なる国と取引する場合は、現地の法律や商習慣に詳しい商社が仲介することによって、取引がスムーズになり、トラブルも未然に防げます。その結果、直接取引よりもコストが低く抑えられるのです。

商社の機能とメリット

1. 世界中に張り巡らされた独自のネットワーク

国内外で様々な事業を展開している日本の商社は、世界中に独自のネットワークを構築しています。
グローバルなサプライチェーンや情報網、様々な分野におけるパートナーシップなど、商社には他の企業にはない強みがたくさんあります。

2. 豊富な資金力

潤沢な資金力を背景に、大量発注・一括購入が可能です。これにより、一個あたりの単価を低く抑えることができます。
一括購入した商品を顧客のニーズに合わせて小ロットでも販売してくれるので、顧客側にもメリットがあります。

3. サプライチェーンからバリューチェーンへ

現代の総合商社は、原料の調達から製造、販売までサプライチェーン全体に深く関わっています。これにより、大幅なコスト削減や効率化が可能になりました。
また、グローバルな取引や情報網を駆使して集めた経営ノウハウや資金力をサプライチェーンに投入することで、工程ごとに付加価値を加え、単なるサプライチェーンからバリューチェーンへと変えています。

日本の商社はサプライチェーンの川上、川中、川下で、以下のような役割を果たしています。

川上:原料・資源(鉄鉱石、原油、天然ガス、穀物など)の採掘や権利(権益)を獲得する。
川中:調達した原料を加工・製造するプラントや企業に出資し、経営に参画する。
川下:完成した製品や食品を流通・卸売りする。

4. 安定供給

総合商社は世界中に独自のルートを持っているので、地政学リスクや不作などで特定の地域からの資源や穀物の供給が滞ったとしても、他の地域から調達することができます。
特に今年は、中東情勢の悪化により、商社が大活躍する年となりました。

中東からの輸入ルートが絶たれても、商社のお蔭で、日本はアメリカやエクアドル、アラブ首長国連邦やサウジアラビアなどから石油を買うことができます。
世界情勢の悪化に伴い、近年、商社の評価が高まっています。

商船三井が保有する大型タンカー KAZUSA

5. インフレ・円安に強い

日本の総合商社は石油、天然ガス、鉱物などの資源権益を多く保有しており、資源インフレがそのまま利益につながります。

また、円安の影響で、多くの海外事業を展開している総合商社は、軒並み増収となっています。
一例を挙げると、三井物産の2026年4〜6月期の連結決算は、過去最高を更新しました。海外での利益を円換算した効果は、260億円です。

一方で、総合商社は海外だけではなく、国内事業も展開していますので、国内事業の方は円安の影響がマイナスに働きます。

総合商社のデメリット

総合商社のデメリットは、ずばりコングロマリット・ディスカウントです。
事業を多角化しすぎると、資本効率が低下したり、業績不振の事業が好調な事業の利益を食い潰してしまう可能性があります。
また、経営トップが専門外の事業を正しく判断できないリスクなどもあります。

住友商事などはこの典型でしたが、2026年5月に不採算事業を整理したことが好感され、株価が大きく上昇しました。

2026年5月に株価が大きく上昇している

余談ですが、Googleの株価チャートの右上に表示される「フォロー」というボタンをクリックすると、その銘柄がGoogleアカウントに保存され、関連ニュースや株価の動き、決算発表などが表示されやすくなりますよ。
一度、試してみてください。

まとめ

バフェット氏は日本の商社株を非常に高く評価しており、「50年は売らない」と公言しています。
バフェット氏に倣うなら、私たちも商社株を購入するときは、長期保有を前提としたいですね。

一方で、商社の株価は原油や天然ガス、鉄鉱石など国際資源の価格の変動やグローバルな景気動向、地政学リスクによって大きく変動する傾向があります。
踊子も商社株のインデックスを少し購入していますが、ホルムズ海峡の動向一つで上にも株価が下にも大きく変動しています。

割安ではありますが、変動が激しい銘柄ですし、テック株のように短期間で何十倍にもなることはありません。時間をかけて緩やかに伸びていく印象です。
商社株はコアではなく、サテライトとして購入することをお勧めします。

*投資は自己責任でお願いします。

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