AIブームと国策が追い風に?
電力、ガス、水道など生活に必要不可欠なインフラは、景気が悪化しても需要が大きく減ることはありません。
また、毎月の収益も比較的安定しており、業績予想も立てやすいのがメリットです。
さらにまた、AIの普及による電力需要の増加が追い風になり、近年、電力関連株が注目を集めています。
政府も「グリーントランスフォーメーション*」や「第6次エネルギー基本計画*」を国策として掲げており、今、電力株には強い追い風が吹いているように感じます。
昔から「国策に売りなし」と言われるように、国の政策に関連する業種や銘柄は株価が値上がりしやすくなります。

初心者投資家は「この状況なら電力株は確実に上がる」と思いがちですが、実は、話はそう単純ではありません。
* グリーントランスフォーメーション:化石燃料からクリーンな再生可能エネルギーへの移行を目指す改革。
* 第6次エネルギー基本計画: 2050年までに温室効果ガスの排出を全ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向けたエネルギー政策。
AI株の次は電力株?
今年、投資系インフルエンサーの「AIの次に大きく儲かる株は電力だ」の一言で、よく調べもせずに電力株に投資をした人は意外と多いのではないでしょうか?
実は、踊子もその一人です。もちろん、自分ではちゃんと調べたつもりでした。しかし、所詮は初心者投資家…今となっては、調べ方が全然、甘かったと反省しています。
皆さんが踊子と同じ轍を踏まないように、今回の記事は自分の過ちを認めた上で、次の手を示唆する内容となっています。
電力株の4大リスク
電力株は値上げの影響が国民生活に直結するため、政策や規制にかなり縛られます。電力株に投資をする際は、以下の4大リスクを慎重に見極めることが重要です。
1. 政府・自治体の規制
電気料金は電力会社の裁量だけでは決められません。電力料金の値上げには、政府の承認が必要になります。
皆さんもご存知のように、今年に入ってからホルムズ海峡の封鎖により燃料費が高騰しており、多くの電力会社が値上げを申請しています。
もしも、政府が値上げを認めなければ、電力会社の負担は大きくなり、収益が減り、株価も下がってしまいます。
需要は確実に増えている。しかし、簡単には値上げはできない。良くも悪くも、政策が株価にダイレクトに影響するのが電力株です。
消費者としては電気料金の値上げを歓迎できませんが、投資家としては電力会社の収益の向上を望んでしまいますね。
投資は自己責任でお願いします。

出典:関西電気
2. 燃料価格の上昇
火力発電を主力とする電力会社にとって、原油、液化天然ガス(LNG)、石炭などの燃料価格の上昇は業績に直結します。
国際情勢の悪化や地政学リスクにより燃料価格が上昇すると、電力会社のコストが増し、利益が削られてしまいます。

3. グリーンエネルギーの使用の義務化
温室効果ガスの排出量を削減するため、電力会社には太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーの利用が義務付けられています。
再生可能エネルギーは燃料価格高騰の影響を受けないため、収益が向上する可能性がありますが、一方で、自然条件に左右されやすく、発電量が不安定などの課題も多く残されています。
また、発電に再生可能エネルギーを利用するためには、大規模な設備投資が必要となります。

4. インフラ設備の老朽化
発電所、変電所、送配電網などの電力インフラの多くは、高度経済成長期に敷設されたものです。敷設から40〜50年以上が経っており、老朽化が進行しています。
電力の安定供給と事故防止のためにも、これらのインフラ設備を順次、改修する必要がありますが、それには莫大な費用がかかります。
これらの改修コストは、最終的には消費者に転嫁されます。

原子力発電が再脚光を浴びている
国策として推されているのは再エネ発電ですが、発電量が不安定で、コストが高いのが難点です。
火力発電も燃料費の上昇などで収益を圧迫する原因となっています。
そんな中、再び脚光を浴びているのが、安定して電力を供給でき、ランニングコストが低い原子力発電です。
原子力発電所の再稼働により、電力会社の収益率が大幅上昇⤴
電力会社の収益率を高めるためには、原子力発電所の再稼働がカギとなります。
高市政権になってから原発再稼働に反対していた公明党が政権から離脱したこともあり、今、原発の再稼働が加速しています。
日本が地震大国であることを考えると、原発の再稼働には一抹の不安を感じなくもありませんが、東日本大震災以降、原発の安全基準や規制はかなり強化されてきました。
東日本大震災から15年。今、国も国民も地震への不安よりも経済合理性を優先するフェーズに入ってきていると感じます。
原発の再稼働により、業績を伸ばしている電力会社は?
原発の再稼働により収益率が大きく改善し、株価が急上昇している電力会社は以下の2社です。

(2026年9月7日時点)
関西電力
2023年、ウクラナイナ戦争により急騰していた燃料価格が下落し、3月期の決算は過去最高となる4,419億円となりました(前期の17倍)。
同年7月には、原子力発電所を再稼働させ、発電量が一気に58%増加しました。
これらの要因が重なり、関西電力の株価は2023年~2024年にかけて大きく上昇しました。
2025年には、データセンター運営のための増資として新株発行と自己株売却を行い、株価の下落を招いてしまいましたが、同年秋にはデータセンター需要への期待感から株価が持ち直しました。
2026には19年ぶりとなる高値をつけ、みずほ証券などの証券各社が投資判断を「中立」から「買い」へ引き上げました。
投資は自己責任でお願いします。

2023年から2024年にかけて、株価が急上昇している。
注意すべき点
- 関西電力の株は1単元が100株となっています。100株未満の取引には、かぶミニ(楽天証券)やS株(SBI証券)のような便利な仕組みを利用すると良いでしょう。
- 何らかの問題が発生して、原発の稼働率が落ちたり、休止したりすると、一時的に株価に影響が出る恐れがあります。
- 設備投資・維持費の上昇や燃料価格の上昇によって、収益が圧迫される可能性もあります。
関西電力が保有する原発
関西電力が保有する原発は、以下の3基です。
・美浜発電所(福井県三方郡美浜町)
・高浜発電所(福井県大飯郡高浜町)
・大飯発電所(福井県大飯郡おおい町)


地震のリスクは?
日本海側に位置する福井県は、日本でも地震の少ない地域の一つです。
万が一、南海トラフ地震が発生しても、日本海側は揺れも小さく、津波が起こる可能性も低いと言われています。
但し、福井平野は揺れに弱い軟弱な地盤が多いため、もしも大地震が発生すれば液状化現象などが起こる可能性がありますが、原発は若狭湾沿いに立てられているので問題はないでしょう。
どの地域でも絶対に地震が起こらないという保証はありませんが、福井県は日本国内では原発にかなり適した地域と言えるでしょう。

九州電力
2024年にTSMCの半導体工場が熊本で稼働を開始したり、九州エリアにデータセンターが相次いで建設されたことから、電力需要の爆発的な増加が期待されています。
また、再稼働した原発が(玄海・川内)の稼働率が高く、安定していることも高く評価される要因となりました。
2024年3月期の最終損益は、1500億円の黒字でした。
2025年に発表された長期経営計画では、株主還元や配当について具体的な数字が示されなかったため、投資家の失望を招いて株価が下落しました。
しかし、堅調な収益や決算が続いたため、2026年には上昇に転じています。
投資は自己責任でお願いします。

今年7月からの上昇が目覚ましい。
注意すべき点
- 九州電力の株は1単元が100株となっています。100株未満の取引には、かぶミニ(楽天証券)やS株(SBI証券)のような便利な仕組みを利用すると良いでしょう。
- データセンターや半導体工場の新設により、期待先行で株価が上昇していますが、業績にはまだ反映されていません。
- 期待だけで投資せず、「現実の数字」を冷静に判断する必要があります。
- 2026年10月1日から、九州電力の持株会社がキューデンホールディングス株式会社に変わります。株を購入する際は、ご注意ください。
九州電力が保有する原発
九州電力は佐賀県と鹿児島県にそれぞれ1基ずつ原発を保有しています。
・玄海原子力発電所(佐賀県)
・川内原子力発電所(鹿児島県)

佐賀県と鹿児島県の2ヶ所にある。

地震のリスクは?
玄海原発がある佐賀県は、周辺に大きな活断層や活発なプレートがないため、地震が少ない地域です。
一方、川内原発がある鹿児島県は比較的、地震が多い地域です。近年は、小さな地震が続く「群発地震」が多発しています。
東京電力の現状は?
東日本大震災前は、電力株は「安定した高利回り株」として、個人投資の人気を集めていました。
特に東京電力は世界でもトップクラスの技術を有し、世界中から高く評価されていました。
しかし、東日本大震災後は福島第一原発の事故に伴う巨額の賠償や廃炉費用が重なり、業績が一気に悪化しました。
収益改善の鍵となるのは、柏崎刈羽原子力発電所です。
柏崎刈羽原発は2026年4月、約14年ぶりに再稼働しましたが、依然として厳しい経営環境が続いています。


日本に電力株のインデックスはある?
上述したのはすべて個別銘柄ですので、インデックスもご紹介しておきます。
残念ながら、日本の電力関連のインデックスで、NISA対応となると選択肢はかなり限られてしまいます。
踊子が知る限り、電力関連のインデックスは以下の一つしかないようです。他にもご存知の方は、是非、コメント欄で教えてください。
NEXT FUNDS 電力・ガス(TOPIX-17)上場投信


上の表が示すように、NF電力・ガス(TOPIX-17)には東京電力が含まれています。
インデックスは複数の企業にリスク分散できるのがメリットですが、リスクを分散する代償として、業績が良くない企業の影響も受け入れなくてはなりません。
個別株ほどの急成長は望めませんが、中長期的には上昇が見込まれています。
投資は自己責任でお願いします。

中長期的には上昇が見込まれる
アメリカの電力事情
アメリカの電力規制も日本と大差はありません。
電気料金の値上げには行政の承認が必要となりますし、発電所を建設するには厳しい安全基準を満たさなければならず、環境への配慮も必須です。許可を得るだけでも、数年がかかります。
そのため、マイクロソフト、アマゾン、グーグル、メタなどのビックテックは、、潤沢な資金に物を言わせて、自分たちで専用の発電所を建設する計画を進めています。
民間向けの発電所でない場合、満たすべき要件はかなり少なくなります。
また、電力会社を買収したり、電力会社の発電所の建設や再稼働に巨額の資金を提供したり、大型契約を結ぶなどして「電力」の囲い込みも図っています。

アメリカの電力株
米国の電力関連のインデックスと言えば、XLUやVPUが有名です。
どちらも超大手の証券会社が運用しており、低コストで提供されています。
XLUとVPUはどちらもディフェンシブ株が中心のファンドですが、構成銘柄の数と分散度は異なります。
*今回は米国の個別銘柄については触れません。
XLU(公益事業セレクト・セクター SPDR ETF)


投資すべきなのか悩む…

中長期では緩やかに上昇している
今年、踊子もインフルエンサーの「これらからは電力株の時代だ!」という言葉に踊らされて、XLUを買い始めましたが、今は含み損になっています。
バフェット氏であれば、構成銘柄によく知らない企業名が並んでいる時点で投資しなかったと思います。浅慮でした…
この時は電力関連銘柄がよく知らず、少ない選択肢の中から仕方なく選んだ結果でした。
最近になって、日本にも電力関連のインデックスがあることが分かったり、関西電力のような個別銘柄でも良いのではないかと思ったりするようになりました。
もしも、踊子の記事を読んでXLUを買った人がいたら、本当にごめんなさい 🙇
しかし、どんな銘柄でも1年は様子を見ると決めているので、今、損切りをするつもりはありません。中長期目線で見守っていきたいと思っています。
投資は自己責任でお願いします。
VPU(バンガード・米国公益事業セクターETF)



中長期的には右肩上がり
まとめ
世界的なデータセンターの建設ラッシュにより、電力需要の急増が見込まれていますが、電力株には設備の老朽化や燃料コストの上昇、莫大な維持費など見逃してはならないリスクがあります。
AIであれば、コードを書くだけで製品が作れますが、大規模な発電所や送電網を必要とする電力企業はそうはいきません。利益率はどうしても低くなってしまいます。
しかし、電力のような生活に欠かせないインフラは景気が悪化しても需要が落ち込むことはありませんし、人間の営みが続く限り、なくなりません。
すぐには利益が出なくても、中長期的にはプラスになる銘柄です。
電気料金は年々、値上がりしていますが、値上がりにひたすら耐えるだけでは負けてしまいます。
今の時代、賢く投資をして、電気料金が上昇した分を運用益で取り戻すぐらいの気構えが必要です。
皆さんは投資を始めて何年目でしょうか?踊子は今年で3年目です。このブログの読者の多くも新NISA民だと思うので、同じくらいではないでしょうか?
当ブログでは今まではインデックスばかりご紹介してきましたが、今回は初めて個別銘柄を取り上げてみました。
皆さんはどう思われたでしょうか?個別銘柄に興味を持たれた方も少なからずいらっしゃるのではないかと思います。
少しずつ知識を積み重ねていくうちに、踊子は最近、「インデックス投資だけが正解ではないかもしれない」と思うようになりました。
「個別銘柄は危険」という思い込みから脱却できた時が、次のステージに進むタイミングなのかもしれません。
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