【電気代の闇】私たちが毎月払っている「謎の費用」の正体

お金のこと

今年の夏は猛暑になると言われていましたが、関東は体感的には昨年よりも涼しかったように感じます。
まだ暑い日も続くと思いますので、体調には気を付けて、残暑を乗り切っていきましょう。

暑さが続くと、気になるのは電気料金です。温暖化と燃料費の高騰で、どれだけ節約しても電気料金は下がりません。
多くの人は知らないかもしれませんが、電気料金を押し上げているのは温暖化と燃料費の高騰だけではないのです。
今回は、電気料金を押し上げている「3つの謎の費用」について解説します。

10月から電気料金が値上がりする!

「3つの謎の費用」について解説する前に、まずは残念なお知らせがあります。10月から電気料金が値上がりします。
政府は国民の負担軽減策として、毎年、夏(7〜9月使用分)の電気・ガス料金に補助金を出しています。その補助金が9月使用分(10月検針分)で終了となります。

電気・ガス料金の補助制度は、2023年1月から始まりました。毎年、電気使用量が増す夏(7月~9月)と冬(1月〜3月)に支給されています。
補助を受けるために、個人で何らかの手続きをする必要はありません。経済産業省が電力会社やガス会社に直接、支援金を交付し、電力会社やガス会社はその支援金を使って各家庭の電気料金の値引きを行います。

2026年は、標準的な家庭(4人家族)の場合、夏の3か月で計5,000円程度の負担軽減となりました。
10月以降は補助金が支給されなくなるので、電気料金が急に上がったように感じるかもしれません。

電力会社のマイページを開くと、
「電気・ガス料金値引きのお知らせ」が最初に表示される。

今年はホルムズ海峡の封鎖など特殊な事情があるので、10月以降も補助が続くかもしれませんが、今のところは未定です。

秋からの値上げはどのくらい?

9月は夏の補助金が支給される最後の月ですが、暑さが和らぐために、補助金が4.5円/kWhから3.5円/kWhに引き下げられます。
それに伴い、平均的な家庭(4人家族)の場合、前月比で250円〜500円の値上げとなります。

10月(11月請求)からは補助金の支給が終了し、さらに託送料金も改定されるので、標準的な世帯で最大239円程度の上昇が見込まれています(東京電力の試算)。

出典:日本経済新聞

上の表が示すように、値下げ額は電力会社によってバラツキがあります。
中部電力の場合は、火力発電(液化天然ガス)の割合が多いため、大手10社の中で値上がり額が最大の509円です。

ホルムズ海峡の封鎖により、原油・液化天然ガス(LNG)・石炭の価格は全て上がっていますが、その中でも特に上昇幅が大きいのがLNGです(約10%)。
石炭はホルムズ海峡を通って運ばれてくるわけではありませんが、原油・LNGの代替燃料として需要が増しているため、価格が高騰しています。

ガス料金も値上げされる!

都市ガス大手4社は、9月使用分(10月請求分)からガス料金を値上げする予定です。
平均的な家庭の場合、月額237〜307円の値上げとなります。

電気料金に上乗せされている謎の費用1 ― 再生可能エネルギー発電促進賦課金

ここからは、私たちが毎月、払っている電気料金に知らないうちに上乗せされている「謎の費用」について説明します。
謎の費用の中でも一番、金額が大きいのが「再生可能エネルギー発電促進賦課金」です。
再生可能エネルギー発電促進制度は、2012年から始まりました。多くの人はこの制度がいつ始まったのかも知らないまま、14年間も再エネ賦課金を払っています。

再生可能エネルギー発電促進賦課金とは

再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)とは、温室効果ガスの排出量を削減し、クリーンエネルギーの普及を促進するために徴収される税金です。

再エネ賦課金の対象は、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス発電など、CO2を排出しないクリーンなエネルギーを使った発電です。
電力会社は再生可能エネルギーを使って発電された電気を、一定量、買い取ることが義務付けられています。
しかし、最エネ発電は火力発電や原子力発電に比べるとかなり割高で、しかも、発電量が安定しないので、電力会社としてはあまり使いたくありません。

そこで、国は電力会社の負担を減らすために、電力料金に再エネ賦課金を上乗せすることを許可しました。これにより、電力会社がクリーンエネルギー発電を買い取る負担が実質ゼロになり、代わりにすべての負担が消費者に転嫁されることになりました。

踊子の8月の電気料金の請求明細書(楽天でんき)
再エネ賦課金は785円だった。無視できない金額だ!

再エネ賦課金は年々、増加している

再エネ賦課金による消費者の負担は年々、増えています。
しかし、温室効果ガスによる自然災害が増えている現状を鑑みると、再エネ賦課金は今後も増え続ける可能性が高いでしょう。

再エネ賦課金は使用した電力量に応じて徴収されます。一般的な世帯(電力使用量が400kWh)の場合、月額では1,672円、年間では20,064円の負担となります。

出典:新電力ネット

電気料金に上乗せされている謎の費用2 ― 燃料費調整額

電気料金に上乗せされているのは、再エネ賦課金だけではありません。毎月の電気料金には、燃料費調整額も含まれています。
燃料費調整額は1996年から徴収されています。

燃料費調整とは

燃料費調整とは、火力発電に使われる原油・液化天然ガス(LNG)・石炭の価格変動を毎月の電気料金に反映させる仕組みです。
燃料費調整の目的は、燃料の価格高騰による電気会社の負担を減らし、電力の安定供給を維持することにあります。

あらかじめ設定された基準価格よりも実際の価格が高い場合は、差額が電気料金に加算されます。
反対に、実際の価格が基準価格よりも低い場合は、差額が電気料金から差し引かれます。

楽天でんきの場合は、「燃料費調整」ではなく、
「市場価格調整額」と記載されている。

電気料金に上乗せされている謎の費用3 ― 託送料金

電気料金に上乗せされている謎の料金の中でも、一番複雑なのが「託送料金相当額」です。
託送料金の徴収は、電力の全面自由化が始まった1996年に、電気事業法によって定められました。
電気料金の内訳と聞くと、大抵の人は「基本料金」と「従量料金」をイメージすると思いますが、実は「託送料金」は電気料金の約3割を占める重要な項目なのです!

託送料金とは

託送料金(送配電網の利用料)は、電力会社が送配電事業者に支払う費用です。
託送料金は電気料金(基本料金・従量料金)に内包されていることが多く、託送料金という独立した項目としては記載されることはほとんどありません。
送配電事業者は、託送料金を老朽化した送電設備に整備などに充てます。

出典:太陽光発電と蓄電池をお伝えするブログ

託送料金は数年おきに見直しがされており、上述したように、次の値上げは2026年11月です。

出典:KODEN

託送料金には原発事故の賠償負担金と廃炉費用が含まれている!

託送料金が複雑な理由は、託送料金には託送費用だけではなく、福島第一原発の事故の賠償金の一部(約2.4兆円)が含まれているからです。
原発の事故の賠償金は一義的には東京電力が負担することになっていますが、賠償額があまりにも大きいため、その一部が消費者に転嫁されています。

さらにまた、託送料金には廃炉費用も含まれています。
福島第一原発の廃炉にかかる費用は、約8兆円と試算されています。この費用は原則として、東京電力が自社の収益から捻出することになっていますが、なぜか託送料金に上乗せされています。
消費者は毎年600億円かかる廃炉費用を40年間に渡って払い続けるのです。

福島第一原発の3号機の壁面。
事故の発生から間もなく15年となるが、
原子炉内の核燃料デブリはまだ取り出されおらず、放射線量も多い。

まとめ

電力は国民の生活に直結しているため、国が大きく関与しています。
福島第一原発の賠償金や廃炉費用が電気料金に上乗せされていることからも分かるように、電気料金は政府の方針次第で大きく変わります。
また、電気料金には温室効果ガス削減計画などの環境問題や、ホルムズ海峡の封鎖などの地政学リスクも関係していきます。
電気料金を決める仕組みは、私たちが思っている以上に複雑です。

電気料金は今後も値上がりすることが予想されています。私たち消費者ができる対策は、賢く節約し、賢く投資をして、インフレの影響を少しでも和らげることです。

電力株に投資するメリット・デメリットについては、以下の記事にまとめてあります。ご興味のある方は以下の記事をご参照ください。

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