業績は良いのに、株価は暴落?!市場を動かす投資家心理を「VIX指数」と「恐怖と強欲指数」を使って解説!

お金のこと

データセンター向け半導体の旺盛な需要を背景に、破竹の勢いで業績を伸ばしてきたキオクシアの株価が7月17日、突然、暴落しました。SNSでも、投資家たちが次々と悲鳴のような投稿し、市場は混迷を極めました。
あのキオクシア人気は、「根拠なき熱狂」だったのでしょうか?

ウォーレン・バフェットは、「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れているときに貪欲であれ」と言いました。
凡人がこの言葉を実践するのは難しいですが、「恐怖指数」を知っていれば、市場の動向がある程度、予測できます。

今回は、この「恐怖指数」について解説します。

市場を動かす投資家心理

株式市場では、時々、何も悪い材料がないのに、突然、株価が暴落することがあります。
暴落が起きた時、市場を動かすのは投資家の心理です。パニックを起こした投資家が恐怖に駆られて株を売り、売りが売りを呼ぶのです。

パニックを起こした投資家の前では、いかなる合理的な判断材料も無力です。
暴落は常に、初心者の狼狽売りで始まります。

キオクシア・ショックの原因は?

キオクシアの株価は6月22日に最高値を付けました(112,700円)しかし、それから一ヶ月足らずで突然、半値以下(52,110円)にまで暴落してしまいました。一体、何があったのでしょうか?
どうやら、暴落の原因は一つではないようです。

AIバブルの追い風に乗って、
6月には1株10万円を超えたキオクシア
キオクシアの株価は、7月17日に大きく下落した

原因1 半導体の過剰供給懸念

今回の暴落の直接の原因と言われているのは、韓国のSKハイニックスの大規模工場新設(8兆円規模)の発表です。
これにより、半導体が過剰供給になり、キオクシアの業績が下がるのではないかとの懸念が持ち上がりました。
爆発的なAI需要を背景に、韓国だけでなく、米国でも半導体工の新設計画が次々と発表されており、イナゴタワーに群がっていた投資家たちが一斉に逃げ出したようです。

急上昇している銘柄に
初心者投資家がイナゴのように群がる

ここまで記事を読んで、「ん?」と思った人はいませんか?「まだ、新設計画を発表しただけで、工場も建っていないのに、こんなにも株価が下がるのか」って思いませんでしたか?
「株ってそんなものなのかなぁ…」あなたのその感想、正しいです。株ってそんなものなのです。
株価は実体経済よりも、常に数年先を行っています。昨年からAI株が急騰しているのも、数年先に大きな利益がもたらされると思えばこそですよね。
そう考えると、投資家って本当にせっかちで、早とちりですよね。

本物のイナゴタワー

今回、発表されたSKハイニックスの工場が実際に稼働するのは2~3年先になります。しかし、2~3年後に、半導体需要が今ほどあるかどうかは誰にも分かりません。
SKハイニックスに対抗して、キオクシアも増産計画を発表したらどうなるでしょうか?中国では、既に国を挙げて半導体増産計画を進めています。
需要よりも供給が上回れば、価格は下落します。今の需要だけを見て、数年先の計画を立てるのは無謀以外の何ものでもありません。そんな事をすれば、自分で自分の首を絞める結果になってしまいます。

一番、恐ろしい敵は中国で、これまでも中国が本気で参入した市場は、周囲もすべて巻き込んで、辺り一面焼野原になるまで(倒産する企業が続出するまで)、価格崩壊が止まりませんでした。
コロナショックの時も当初はマスクが足りず、価格が異常なまでに高騰しましたが、その後、世界中でマスクが過剰生産され、市場が飽和状態になりました。
特に、中国の生産量は凄まじく、数ヶ月で日産5億枚〜10億枚へと拡大しました。

スピンオフ
SKグループの崔泰源会長は、今年7月、現在の半導体価格は「異常なほど高い」と発言しました。つまり、「高騰する半導体価格が産業全体や需要に悪影響を及ぼしている」と言っているのです。
半導体企業の会長自らがこんな発言をするなんて、今の状況は本当に異常ですね。

AI向け半導体が供給が逼迫しているせいで、スマホやPC用半導体まで不足し始めています。なぜなら、半導体企業が、より利益率の高いAI向け半導体の製造に切り替えているからです。その影響で、スマホやPCの価格も高騰しています。
しかし、2,3年後に新設された工場が一斉に稼働し始め、半導体の供給が過剰になれば、価格が下落する可能性があります(もちろん、株価も)。
スマホやPCの買い替えを検討されている方は、もう少し様子を見ても良いかもしれません。

空前のAIブームのお蔭で足りなくなっている物は、半導体だけではありません。電力そのものも、発電所用タービンも変圧器も足りなくなっています。
変圧器は今、注文しても、届くのは数年先だそうです。一番価格が高い時に注文し、届いた頃には市場価格が半値になっているなんてこともありそうです。

この中で一番、簡単に生産が増やせる変圧器は、今、世界中で増産されており、数年後には供給が過剰になるリスクを抱えています。
これらの製品は、長年、「ものづくり」に注力してきた日本が得意とする物の一つです。既に一部の投資家は、三菱電機、富士電機、日立製作所、東芝などの株に目を付けています。

* 投資は自己責任でお願いします。

原因2 AIバブルに対する不安

キオクシアの株価は、2024年12月の上場以来(初値1,440円)、1年半ほどで78倍近く(11,2700円)上昇しました!

6月22日には、
一時11,2700円の最高値をつけた。
キオクシア・ショックの影響で
日経平均株価も大きく下がった

特に、今年(2026年)の4月頃からの上昇は凄まじく、過熱感が警戒されていました。
期待が先行する上昇相場と実際の需要や業績との乖離が大きいことから、一部の投資家は少し前からキオクシア・バブルを懸念していました。

原因3 過剰投資に対する不安

AIバブルに踊らされていた投資家たちが、AI企業の巨額の投資に不安を感じるようになってきました。ビックテックがこれまで投じてきた巨額の設備投資資金が、本当に回収できるのか疑問の声が上がり始めています。
その不安がAI企業だけでなく、AI企業と同じ舟に乗っている半導体メーカーにまで及んでいます。

原因4 キオクシアの特許侵害訴訟

キオクシア・ショックが起こった7月17日は、キオクシアが米国で特許侵害の陪審評決を受けたと発表さした日です。キオクシアは約370億円の支払い命令を受けましたが、今のところ控訴する構えです。
これが、株価を押し下げる要因になったとも言われています。

しかし、キオクシアの2026年3月期は、売上収益が2兆3,376億円です。もしも、370億円を払うことになっても、大きなダメージにはなりません。
そもそも、このニュースは日本ではあまり取り上げられていません。
しかし、キオクシアの株価を押し下げる間接的な要因にはなっているかもしれません。

原因5 レバレッジ取引の強制決済

急激な株価の下落により、レバレッジ勢の強制的にロスカットが多発したようです。
キオクシアの株を買っている個人投資家の約8割が信用取引で株を買っていたというデータもあります。
また、韓国の個人投資家は借金をして株式投資をする人が多く、その人達が自国の株だけでなく、キオクシアの株も買っていたと言われています。

7月上旬からの韓国の強制決済額は
約3800億〜5000億円と言われている

キオクシアの今後の見通し

データセンター向けの半導体の需要はまだまだ旺盛ですので、2027年3月期第1四半期も大幅な増収増益が予想されています。
2027年3月期第1四半期決算は、2026年7月31日 15:30に発表予定です。

投資家の恐怖を測るVIX指数とは

ウォーレン・バフェットは、「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れているときに貪欲であれ」と言いました。この「恐れ」を示すのが「恐怖指数」です。

VIX指数は、Volatility Index(ボラティリティ・インデックス) の略で、その名とおり株価のボラティリティ(価格変動)を表します。「恐怖と強欲指数(Fear and Greed Index)」と並ぶ、代表的な指数です。
ちなみに、リーマンショックの時はこのVIX指数が急上昇し、「80」を超えました。

引用元: TradingView
リーマンショックの時は、
リーマン・ブラザーズの看板もオークションに出された

「VIX指数」と「恐怖と強欲指数(Fear and Greed Index)」の違いは、VIX指数が米国のS&P500の価格変動に対する恐怖や不安感を示すのに対し、「恐怖と強欲指数」は市場全体の恐怖を表す点です。
「恐怖と強欲指数」は、仮想通貨市場に対しても使われることがあります。

米国の指標ですが、日本株は米国株の影響を強く受けますので、無関係ではありません。
一方、米国株は日本株の影響をあまり受けません。
キオクシア・ショックの時も、S&P500の株価は少し下がった程度でしたし、VIX指数も「平常」の範囲内(16.78)でした。

7月17日のS&P500の株価
7月17日のVIX指数
「平常」の範囲内だった

VIX指数と株価との関係

VIX指数はS&P500と「逆相関」します。株価が下がると、VIX指数は上昇し、株価が上昇すると、VIX指数は下がります。

VIX指数の目安

VIX指数は投資家の心理を、0から100の5段階で表します。
数値が高いほど、恐怖が強い状態を表します。

10〜20:安定・平常

市場は安定しており、投資家の心理状態も落ち着いています。

21~25:懸念・注意

黄信号。市場に少し警戒感や懸念材料が出てきた状態。
一時的な下落が起こりやすい状態。

26~30乱高下・緊張

変動が大きく、ボラティリティが高い状態。
投資家の不安が高まっている。

31~40:強い不安・恐怖

パニックが起こり始めている状態。市場は非常に不安定で、投資家は強い恐怖と警戒感を感じている。

41以上:危機・混乱

市場が完全に混乱し、パニックに陥っている状態。恐怖が伝染し、売りが売りを呼ぶ。リーマンショックのような歴史的な大暴落が起こっている。

恐怖と強欲指数

「恐怖と強欲指数(Fear and Greed Index)」は、VIX指数と同じように、投資家の心理状態を数値で表す指標です。
上述したように、VIX指数が米国のS&P500の価格変動に対する恐怖や不安感を示すのに対し、「恐怖と強欲指数」は市場全体の恐怖を表します。
「恐怖と強欲指数」は、仮想通貨市場に対しても使われることがあります。

どちらもGoogle検索で簡単に調べられますので、是非、明日から活用してみてください。上手に活用すれば、株価の変わり目を知ることができます。

「恐怖と強欲指数」と株価との関係

「恐怖と強欲指数」と株価は、順相関(同じ方向に動く)の関係にあります。
株価が上がると恐怖と強欲指数も上がり(人々が強欲になる)、株価が下がると恐怖と強欲指数も下がります(人々が恐れる)。

恐怖と強欲指数の目安

恐怖と強欲指数は、0から100までの数値で表されます。数値が0に近いほど、市場が恐怖に支配されている状態です。反対に、数値が100に近いほど、市場は楽観的になっています。

0〜25:極度の恐怖

市場が過度に悲観的になっており、投げ売りされている状態。
安く売られていますが、割安株かどうか冷静に判断する目が必要です。

26〜45:恐怖

市場が慎重またはやや悲観的になり、リスク回避のムードが広がっています。
短期的な乱高下があり、さらに下落する可能性もあります。
安易に動かず、冷静に状況を見極めましょう。

46〜55:中立

市場は落ち着いており、強気と弱気のバランスが取れています。
上昇か下落か明確な方向性が定まるまで、様子を見ましょう。

56〜75:強欲

楽観的な見方が強く、相場が上昇傾向にあります。
リスクを取る投資家が増えています。
トレンドに乗るかどうか、慎重に判断すべき局面です。

76〜100:極度の強欲

市場が過熱しており、バブルの兆候が見られます。
一部の株が過大評価されている可能性があり、警戒が必要です。

これらの指数はあくまでも補助的なツールであり、未来を正確に予測するものではありません。
売買の判断に迷った時は、他のチャート分析や経済指標と組み合わせて活用することを推奨します。

航路を守れ

「航路を守れ(Stay the Course)」は、世界的な投資会社バンガードの創設者であるジョン・C・ボーグルが遺した言葉です。
彼は世界で初めて個人投資家向けのインデックスファンドを考案した「インデックスファンドの父」です。市場平均を低コストで買い、長期保有するというシンプルな投資哲学を広めた人物でもあります。
彼がインデックスファンドを作った1976年当時は、「投資は専門家がするもの」とされていたため、個人投資家がただ買って、長期保有するだけのインデックスファンドは馬鹿にされていました。
しかし、インデックスファンドがアクティブファンドよりも良い成績を出すことが証明されると、批判の声は徐々に収まっていきました。

ジョン・C・ボーグル

暴落はいつでも、初心者の狼狽売りから始まります。群集心理に惑わされず、自分の航路をしっかりと守りましょう。

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